コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ゴジラVSキングギドラ(1991/日)

ゴジラには涙を流してほしくなかった、観客に同情を誘うようなことはしてほしくなかった。
がちお

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ゴジラは俺にとってはかなり特別な意味を持った怪獣である、破壊神である怪獣王である。海外のクリーチャー映画やモンスター映画を観ても日本産の特撮怪獣物をみても感じない唯一の存在であってほしかった。

ヒーローになろうとも、ヒールになろうとも、守ってほしかったものがあった。それは製作者が意図的に同情を誘う事だった。まるで大好きだった大物悪役が無理に人間性をアピールするかのようになんとも違和感があるからだ。特に怪獣、つまり人ではない存在であるなら尚更だ。

初代ゴジラのどこが悲しいかといえば、山根博士以外に彼に同情し彼の存在をゆるすような人間がいなかったことだ。だからこそ彼は哀れでその死が悲しいのだ。

ところが、このゴジラとくれば彼とかつて戦場で戦った兵士と再開の涙を流してくれるのである。俺はこのシーンで別の意味で涙が出た。それは失望と辟易の涙だった。

このシーンでもしも、涙を流すのが旧日本軍で戦った軍人のオッサンだけでゴジラのほうは呆けにとられた表情をしながら容赦なく熱線を吐いていれば俺は納得した。もしくは、ゴジラザウルスが日本兵米兵問わず住処を荒らしたと認識して攻撃しまくっていればさらに納得した。

ゴジラという存在には人類の思想や社会など全く気にするものではあってほしくなかったからだ。もっといえばそういったしがらみから解けた自由な存在=怪獣であるからこそ子供たちや我々怪獣オタクがゴジラを愛するんじゃあないだろうか。ゴジラというのはそもそも秩序の破壊者だ。だからこそ人々はゴジラに惹かれている。確かに初代ゴジラの時点で水爆が絡んでいるがあれはあくまで反戦という思想が根底には絡んでいるが、エンターテイメントとしてもかなり優秀であったし、製作者たちもアメリカだけではなく世界中で行われている戦争に備えての核開発を批判するために製作していたはず。

なんというかこの映画のゴジラのオリジンからは妙に反米という非常にチャチい政治思想もっといえば敗戦コンプレックスを感じて妙に差別的な感じがして気持ち悪かった。

そういう意味ではGMKゴジラのオリジンもあまり好きではないが、あれは作品として面白いしそれが余計にゴジラの存在を科学を超越した存在であるとしているので目をつぶることが出来るが、この映画は一方で脚本もタイムパラドックスネタが酷く、特撮シーンも背景の描きこみが足らないゆえにゴジラやキングギドラの巨大感が伝わらないためにエンターテイメント性は低く。また先ほど言ったように作品の中で漂う反米的な作品思想が鼻につき非常に楽しめない映画だったので余計に気持ち悪いものを感じた。

正直、この映画でのゴジラのオリジンはかなり客観的に観てもかなり破綻している。それを順番に説明していきたい。

まず1つ、なぜ人間の戦争で一々ゴジラザウルスがつっこんでくるのか?

まぁ、これについては住処を荒らされているから仕方ないにしても住処を荒らされた怒りなのだろうが、それならば日本兵も米兵も同罪のはずでなぜ米兵ばかりを襲撃するのだろう。この映画のゴジラザウルスは米兵しか襲わない。ゴジラが人種差別をしてどうするんだ?まぁこれは流石にツッコミすぎにしても。

二つ目、結局、ゴジラザウルスは死んだのか?

銃撃でゴジラザウルスが撃たれて重傷を負うシーンがあるがアレは同考えても戦時中の1940年代の話になるはず。あの傷から察するとゴジラザウルスはその後数日で死んでいたはずだが、ならば水爆の放射能を浴びて怪獣になったらしいがビキニ水爆実験は1954年のはず。その間ゴジラザウルスは何をしていたアレほどの傷を負えば普通生物なら死ぬぞ?死ななかったということは水爆関係なしにゴジラはもともと頑丈な生命体だったということになる。

3つめ、そもそも初代ゴジラってなんだったの? これに尽きる。タイムマシンで1992年に暴れてるゴジラの存在を消去したのはわかるがでは1954年にいたゴジラと1992年に暴れてるゴジラは何の関係があるんだ?そもそも前作ビオランテででてきたやつはどうなった?

もう書いてるこっちがわけわからんし、読んでる人もわからないとおもうがこれだけ何とも理解しがたいのがゴジラのオリジンである。

ゴジラのオリジンについて散々語ってきたが、一番のこの映画の問題は旧日本軍兵士とゴジラが遭遇して涙を流すシーンだ。ゴジラはそもそも恐竜であるはずである。恐竜は涙を流すのだろうか?手話をするゴリラが「悲しい」という表現をしたことは知ってるがゴリラが泣いてるのをみたことがないぞ。そもそもゴジラに涙腺があるのか?確かに観る人によっては悲しいシーンだろうがそういった科学的側面からみても疑問がわいてくるし、ゴジラが涙を流すことで意図的にゴジラを悲しい存在にして同情させようとするのはいくらなんでもあまりにも幼稚で陳腐すぎる。

それならば1984年のゴジラの火山の中に消えていくラストのほうが1000倍は悲しいし、メカゴジラの逆襲で海に消えていくゴジラの背中のほうが10000倍切ないという話である。っていうかぶっちゃけ、エメリッヒのゴジラの死ぬシーンのほうがもっと悲しいっていう話である。ゴジラのほうから観客にこびて涙を誘うようなマネはしてほしくなかった。

いろいろなゴジラ作品がこの地上にはあるが、最も俺が嫌いなゴジラ映画はこの映画で間違いない。

(評価:★1)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。