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[コメント] 偽りのないhappy end(2020/日)

園子温に師事した監督の作品であることが喧伝されているけど、むしろここで展開されているのはアスガー・ファルハディ的と言える。人間関係の嫌な部分を嫌なまま紡ぎ、最後はハッピーエンドだと言うのである。
ほんこん

まさに白眉と言うべき、冒頭の夜の琵琶湖に浮かぶ船の上で妹と姉が向き合うショットで、この映画は女性たちの目の映画なのだとわかる。河合優実の退廃的だけど何かを希求している目と、鳴海唯の優しそうなくせに不実な目。

全編を通してこの作品が撮られた2年前では殆ど演技の経験がなかったという若手女優たちの演技、そして「目」が際立っている作品だと思う。(そして2年後の今、見上愛だとか河合優実が主演級に上り詰めている事を考えると、キャスティングに関しては慧眼だった言えるのだろう)

脚本は後半大きな展開を見せる。些か荒唐無稽とも言える展開に違和感を感じるのだけど、前半と後半での決定的なある違いと提示されている登場人物の中に、理解のための一つの補助線を見つけると、するすると眼の前が開けていくという脚本の妙は見事だと思う。

新人女優の演技も含め、デビュー作だからこそ許されるであろう強引さや粗さが散見する作品なのだけど、端々で見られる決定的なショットの存在や、構図の正しさと気持ちよさといった映画的快感を含めて考えていくと、堂々たるデビュー作であると言えると思う。

(評価:★5)

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