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[コメント] A.I.(2001/米)

未来のおとぎ話。そして,おとぎ話はいつの世も残酷。
ワトニイ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人を愛し,人から愛されたいと願うことが,生きていることの証ということだろうか? 「機械は,はたして人間と同じように感情を持ち得るか?」というテーマは,『ブレードランナー』などとも共通しているが,テーマを愛に,しかも母親の愛に絞っていた点で,この作品の方がわかりやすかったと思う。

結果として,デイビッドが限りなく人間に近い感情を持った(と言っていいと思う)時,深い海の底に閉じこめられてしまい,やっと地表に出られた時には人間が絶滅してしまっていたというのは,何とも皮肉な結果だ。正直言って,あそこで終わっていた方が良かったと思う。

ラストは,デイビッドが母親とたった1日だけでも再会できて,幸せそうに眠りに着くシーンで終わるが,ふと冷静になって考えると,果たして彼は本当に幸せなのだろうかと思ってしまう。やっと感情を持つことができた時には,もう同じような感情を持つ人間が1人もいなくなってしまったのだから。新しい出会い,新しい心の触れ合いもなく,彼はこのままずっと追憶だけにすがって生きていくのだろうか? よく「人間は一人では生きられない」というが,はじめて感情を持った彼を待っていたのは一人ぼっちだったというのは,一見ハッピーエンドそうでいて,実はとても残酷な結末のような気がする。ちょうどチャップリンの『街の灯』と同じ様に。

いずれにしても,この作品は良くも悪くもスピルバーグらしさが出ていたと思う。私には,全編を通して柔らかさというか優しさ(ここではあまり誉め言葉ではない)が感じられた。中盤のジャンク・フェアのシーンなどは,キューブリックだったら『時計じかけのオレンジ』を彷彿とさせるような,もっとどぎつい残酷な描写になっていただろうと思う。もしキューブリックが撮っていたら…と考えることはあまり意味がないと思うが,正直言って,それもぜひ観てみたかった。

(評価:★3)

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