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[コメント] けものみち(1965/日)

東宝充実のモノクロワイドで『天国と地獄』に拮抗する傑作。池内淳子の見事な代表作だ。「僕の道具になってみませんか」だって。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







タイトルからして凄い。武満の音楽と併せて箆棒だ。町中から広がるシミがウルトラマンのOPみたいなのは黒部進つながりで面白い。モノクロ撮影は方々すごいのだが、印象的なのが池内淳子が放火してタクシーを拾う件、二階屋から撒かれる水が見事に捉えられていて驚かされる。

池内の般若のような眉毛が凄すぎる。放火で始まり放火で終わる因果の巡る作劇で、この際の炎の音だけを取らない音声処理が格好いい。ラストの風呂場で手をかざす池内のキメのポーズが何とも云えない。森塚敏の亭主と小沢栄太郎も中風の病で対照されており、小沢のメイクもすごいが森塚の肌着姿もすごい。大塚道子や黒部進の怪しさも素晴らしく、白坂流の嫌味が好転している。作話で素晴らしいと思ったのは、小沢のボス逝去によりバランスが崩壊したという終盤の無茶苦茶の理由づけ。

新聞まで情報が筒抜けとはディストピアの完成形であり、唯一まともな人物である土屋嘉男の記者も何の役にも立たないのだった。小説のモデルは児玉誉士夫と云われるとのこと。全体に告発にしては娯楽に寄り過ぎた憾みはあるが、それでは無いものねだりになるだろう。70年代の野村芳太郎の清張ものは本作の縮小再生産と見えてくる。ロケで霞が関は合同庁舎3号館が建設中なのが確認できる。

(評価:★5)

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