コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アレックス(2002/仏)

時間軸の遡りにしても、ぐるぐる回るカメラワークにしても、なんだか露骨に技巧的で小賢しく感じる。不快な現実を隠蔽しない表現の価値は認める一方、それが「売り」になってしまうのもまた巧くないと思う。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







と言いつつも、観た者に良くも悪くも強烈な感情を喚起する力があるのは認めないわけにはいかない。

また、時間軸遡りについて云えば、我々がマスメディアを通じて残虐な事件を認知する場合における陥穽を暴いていることが興味深い。

即ち、映画の最初のほう(時間軸通りにいえば後のほう)を観た段階で、我々はヴァンサン・カッセルはチンピラか何かで、それがヤクザ者同士の諍いであるような印象を受ける。また、冷静な表情のまま男の顔面を破壊するアルヴェール・デュポンテルは不気味な殺人鬼であるように感じる。

ところが、映画が進み、時間軸を遡って行くにつれて、実は二人とも(おそらく比較的高階層に属する)ごく普通の一般市民であることが判明する。

これは、マスメディアを通じて犯罪事件を知ったときに、我々が自分たち一般人とは一線を画する別世界の出来事であるようなファーストインプレッションを抱くことに通じている。我々は、そんなおぞましい事件は別世界の出来事であると信じたい。だが、実はそれは我々が生きているまさにこの現実の世の中で起こったことであり、一歩間違えれば我々自身が加害者であり被害者であり得たのである。そのことを痛切に感じさせる作りになっている。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。