前半のフィルムノワール的なハードボイルドから後半のサバイバル（？）の流れもとてもどきどきして楽しくて、ババの成長やフィリックスの心の動きに眼を細めてみたり、とてもあったかくて切ない気持ちになった。

フィリックスとババの二人の周りのキャラたちとのそれぞれのサイドストーリーは更に物語りの奥行きを持たせている。 フィリックスと恋人の関係がライトな感じに描かれているのは、やはり男同士の関係に重点が置かれているからじゃないかな。 ラストに二人のベイビーが登場するので十分だと思う。

この映画がオシャレ映画みたいな位置付けになっているのはその凝った美術に因るところが大きい。 部屋やアジトのノスタルジックな雰囲気。 キリンの人形やババの帽子や、ストーリーの要になるアイテムもひとつひとつがアイコンとして頭に焼き付いて、この映画を更に心に残るものにしていると思う。

そして男同士の映画にふさわしいキャスティングの妙。 ステラン・スカルスガルド最高！ ポール・ベタニーは『ギャングスターナンバーワン』でもクールなギャング姿が拝めます。

最後のシーンで登場しただだっ広い海の風景はそれだけで感動。 イギリスのどこかの海岸らしいけれど。 前半〜中盤と流れてここで終わるのはちょっと想像つかなかったけれど、フィリックスの生き方も変わり、時代も変わり、新しい命を迎えるという素晴らしいスタートだと思います。 音楽もまた、泣ける。