「雨の中たたずむフィリックスが、ふと目を閉じて雨の味を確かめてみる」…このワンシーンに、この作品の優しさとハードボイルドがすべて詰まっているように感じた。

男の映画であり、出色のお父ちゃん映画。「お父ちゃんモノ」激ヨワなわたくしのくせに、事前情報の無さから全然ガード固めずノホホンと観ていたため、思いもよらずど真ん中撃ち抜かれて日曜の朝っぱらから倒れ臥してしまった。うおーん、パジャマの襟がびしょぬれだよー！

フィリックスとババの関係に目が行きがちだけど、ジミーもずっとずっとフィリックスの息子だったんだよな。「孤独が身上」とカッコつけてても、これだけいい親父さんに恵まれ、恋人や息子たちに愛されるからには、それだけの宝物があるのでしょう、フィリックスという人物には。

あまり浪花節に重点をおかずにさくさく話が進むため、人物描写が浅く、そっけないような印象も受けるが、わたしは逆にそこに製作者の「照れ」みたいなものを感じてしまって、この作品の登場人物たち全体に漂う照れ屋さんテイストに重ね合わせ、なんとなく好もしく思った（自分自身相当な照れ屋なので）。愛と感動の波でどっかんどっかんやられたら、逆にひいちゃっただろうなあ。