[コメント] 沙羅双樹(2003/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
見終わった直後は、個人的には、もうひとつ、何かが足りない気もしました。 しかし、しばらくして、いや、これはこれでいいのかもしれないと、いう気にもなりました。
おそらく、登場人物たちの背景は、いろいろと深くて重たい事情が、あるはずで、しかしそれがはっきりと、物語の中で説明されることはありません。 だからこそ、いろいろと想像できるというか、余韻の深さが出るのかもしれません。
分からなかった点としては、少年のもう一人の双子の兄弟が、「神隠し」のように消えてしまったのは、何故か? また、5年後に、見つかった知らせがありましたが、おそらく死んでいたと思うのですが、その状況は、全くと言っていいほど説明されません。 何故消えたのか、どういう状態で見つかったのか。
そして、少女の方ですが、少女の本当の母親は、実は樋口可南子が演じる母親ではなく、他にいることが明らかにされます。 実の父親は死んでしまい、実の母親は病気がちになり、育てることができなくなったから、実の母親の妹、つまり樋口可南子演じる母親が、その子を引き取って育てるようになります。
ここでも、樋口可南子が少女に、寓話的に語るだけで、実の本当の父親の死を、冒険好きだったから、と語るだけで詳しくは語りませんし、ましてや、実の母親が今どこでどうしているのか、と言うことも全く語られません。
ここで、私は、鑑賞しながら妄想的に、こう考えました。
少女の実の母親は、実は「少年の母親」ではないのか、と。 少年の母親が実の母親だと、少年と少女は、言ってみれば同じ母親から生まれたことになり、父親は違えど、同じ血の繋がった「兄弟」ということになります。
少年と少女は、お互い好意を寄せ合っていますが、「兄弟」となると、これは絶対に惹かれあってはいけない。けど惹かれあっていく、これはどうなるんだ…?
と、まあ勝手に妄想してしまったのですが、そういうことではなかったみたいですね…。だって同じ年の少年がいるということは、少女を産める余地はないはずで、この妄想は却下ですね。
まあ、そういうわけで、少年と少女の家庭のことなど、説明はほとんどせずに、映像と役者の自然な演技で、物語を引っ張っていきます。 「あいまい」な部分に余韻が生まれ、それが、少し未消化な部分を感じるのは事実ですが、非常に日本的な、良い作品であるのかな、ということもすごく感じました。
冒頭の映像と、最後の映像が、何ともいえない魅力的なカメラワークです。 この映像を見たときは、これは『萌の朱雀』のラストシーンのカメラワークと同じ手法だ!と思ってしまいました。撮影者が同じかなと思ったけど、違いました…。でも監督の思いが詰まった映像で、見惚れてしまいました。
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