深作欣二版の『仁義の墓場』は凶暴なヤクザの伝説をそのまま映像化したもので、主人公の人間性に対する独自の解釈のような物は比較的少なく感じました。

従って出来上がった映画は行動原理が全く理解不能な狂人が暴れまくる、ホラー映画風のものでありました。　

リメイク版は趣が異なっています。「馬鹿な子ほど可愛い」をテーマとし、登場人物に魂を吹き込もうとした痕跡が感じられます。　

パンツ一丁でベランダ上を右往左往し、見えない敵に発砲する様子を引きで撮った画は滑稽そのものでして、観ているうちに「しょうがねえ馬鹿だな（笑）」という気になっていきます。この、（笑）がポイントです。駄々っ子が心理的一線を越え、水鉄砲を室内で噴射しまくり、お母さんを困らせてやろうとするような愛らしさがあります。

そういった小技を使い周りの人間が、主人公を庇護する説得力としているように感じられます。仮に私の感じたテーマが正解であるならば、それが最も顕著に浮き出たシーンとして、ラストの『山城新伍』の涙。それにに加え、『三池崇史』監督の舞台挨拶における発言「良い人だったんじゃないかな、と思うんですよ」が挙げられます。