コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] つらあて(1914/米)

チャップリンの監督三作目。自身が記したフィルモグラフィーには記載されていない作品らしい。もしかしたら気に入っていなかったのかも知れない。本作のチャップリンは珍しく女性役だ。
ゑぎ

 しかし、それ以上に、最終盤では珍しい、特筆すべきカッティングが見られる。これらの事柄から、本作はフィルモグラフィーに欠かせない作品と云うべきだと思う。

 さて、港の近く行われるパレードを見物に来た夫婦の話。夫はマック・スウェインで妻がチャップリン。開巻既に2人は画面の中にいるのだが、一見して倦怠期と分かる雰囲気だ。チャップリンはスカートの裾で鼻を拭く。彼女が目を離している隙に、スウェインは別の女性を追いかけて画面から出ていく。一人になったチャップリンは、パレードを撮影するクルーを邪魔したり、ガードマンとやりあったりし始める。殴ったり蹴ったりで人物が吹っ飛ばされると、カットを換えて、その人物が転がり込んだりする空間を見せるといったカッティングがよく繋がっている。

 また、チャップリンが左側の画面外を見た後に、係留されている船が繋がれるのにも驚く。実は、こゝが港の近くである、ということは、この時点で初めて知らされるからだ。さらに、チャップリンのミタメで夫のスウェインと若い女性のショットが繋がれる演出。こゝから、チャップリン夫婦も殴り合いを始め、他にも楽団の前で警官と激しく殴り合うし、スウェインが連れていた女性も当然のように殴られるし、といった具合で実に暴力的な演出になる。

 そしてラスト近く、群衆の中でやり合うスウェインとチャップリンのショットがあり、ポン引きのように引いて、そこが桟橋の上であることを示すロングショットが繋がれるのだ(カメラは海上の船に置かれていると思われる)。これには驚いた。同一の空間で継続した時間を2つに割ったカッティングはチャップリン監督作としてはこれが最初だろう。ラストショットのブラックなオチもいい。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。