[コメント] つらあて(1914/米)
5分間ただ殴る蹴るで意味が分らなくとも勢いのあるSO-SO作品
チャップリン監督のトンデモ作品ではあるが、その意味をはぎ取った単純なヴァイオレンスコミック風のアクションだけで何かが成立している摩訶不思議な作品である。チャーリーではなく女装のチャップリンというキャラで今回は勝負だが、理由なく熟女(なのか?)のヴァイオレンスはどこか笑える素材力を湛えているのだとしか言いようのないパワーを感じる。TVのやる芸人変わらぬコントにおいても、似たようなネタはもはや王道ともいえる素材である。余計な施しは必要なく、ただ女装して殴る蹴るという単純さこそが必要であり、この笑い力はもはや理解の域を超えており、槍玉にあげられることを承知で言えば神秘的な境地に達している。そういえば『偽牧師』ではヴァイオレンス赤ちゃんが登場していたが、あの描写が持つ力強さと同質のものといえるのではないか。であるとすればいわゆる「女・子供」がもつ弱者性に付与されるヴァイオレンスというコードが、シュルレアリスムについてのかの有名な一句「解剖台の上に残るミシンとコウモリ傘の出会いのように美しい」というインパクトと合致するのではというのは言い過ぎだろうか。しかし、シュールな感慨とは多くそういう類の閃光であることは間違いない。とすれば計算なきところでこのような一撃を生むこととなった本作はやはりチャップリンの才気が成せる技なのだろう。
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