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[コメント] 恋人たち(1959/仏)

ナレーションによる状況説明で余計なショットを節約するのはまだしも、ヒロインの心情まで語るのが煩い。そこは画で撮れよ。執拗に流れるブラームスにも説得力が感じられず、白ける。皮相な台詞と、画の不完全燃焼ぶり。有閑夫人の慰み物としての軽薄な恋。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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草叢の黒い闇の向こうに、明かりのある空間が開いている画や、ジャンヌとベルナールが水辺に立つ画、二人がボートの上で、葉の隙間から洩れる月光に照らされる画、といった瞬間的なショットの鮮烈さや、寝室での、永遠に続くかのような愛の時間、といった、ベルナールとの熱情へと向かい、またそれを焼尽していく終盤のシークェンスは悪くはないが、何しろそれまでが詰らない。全体的な話の中身の空虚さや、気怠く皮相な雰囲気、歯の浮くような気障で凡庸な台詞等に、退屈さと下らなさで耐え難くなる。

ジャンヌは、未知の男との出逢いの過程という、賞味期限の極端に短い情況や、隠れた熱情という、外気に触れると途端に駄目になる珍味にしか満足できない性格のようで、ベッドの上でベルナールに愛を誓った舌の根も乾かぬ内に、彼との関係に飽き始めている様子。ナレーションが「既に夜明けには不安を感じていた」事を告げ、一方のベルナールも、彼女とどこかへ向かう車内で「ずっと夜ならいいのに」と嘆く。この話の構図からしていかにも夜の闇が効果的に使われていそうに思えるが、実際はそれほど巧いとは言えない。

原作が小説でナレーションが過剰というのは最悪の映画化だろう。映画を電動紙芝居か何かと勘違いしてるのか。楽曲をこんなぞんざいな使われ方をされたブラームスも気の毒。もう、フランス語の甘ったるい響きから、ジャンヌ・モローの、傲慢な欲求不満のブルジョワ女という卑小なキャラクターに加えて脇毛の生え方までもが、全て矮小でケチくさく思えてくる。

(評価:★1)

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