[コメント] 非行少年 陽の出の叫び(1967/日)
蹴られたサッカーボールが、ゴールに近い空中でストップモーション。そこにタイトルが入る。タイトルの太陽イメージを喚起する、なかなかカッコいいタイトルインじゃないか。
出所した純は、ひとまず、少年院の職員−久米明の家に住み込むことになる。久米の妻は佐々木すみ江、娘に三条泰子。年頃の娘がいる家に、強姦の前歴のある純を住まわせるというのは、どうかしていると思うが、はたして、危惧した通りの(いや期待通りの)展開が待っている。と云っても、お互いに魅かれ合っての、という展開だ。本作の純は、無軌道かもしれないが、確固たる意志の力が一貫して描かれており、平田の演技も超然としていて、カッコよく演出されている。また、三条泰子も押し出しが良く、存在感もある、れっきとしたヒロインの位置づけだ。
カメラワークはズームイン/アウトや素早いティルトとパンニングを随所で効果的に使う技巧が目立つ。また、手持ちで人物を追いかけたり周囲を回り込んだり、といった動的なカットが決まっていて、鈴木達夫の面目躍如といった感がある。例えば、純に続いて早めに出所して来た仲間2人−明と伸治がやって来て、純と3人で会うシーン。純が明をビンタするカットで地上のカットから大俯瞰、近くのビルの屋上あたりから撮ったカットにアクション繋ぎで切り換える演出なんかは、藤田敏八の才気だろう。
終盤の、院から集団脱走した少年たちが、護送車を襲うシーンも見応えがある。これが川にかかった橋の上で護送車を待つのだが、少年たちが同じ場所を行ったり来たりし、ジョギングに見せかける、というのがふざけているし、川の土手では、釣りをする作家がおり、記者たちからインタビューを受けるシーンが織り込まれるのがヘンテコなのだ。しかし、護送車がやってくるカットが、予想以上にぐるっと回って来るダイナミックな見せ方で、いいと思った。藤田敏八のデビュー作は、後年の緩さの良さも垣間見ることができるが、概ねタイトな出来で、矢張り、才能が感じられる映画なのだ。
#備忘でその他配役などを記述します。
・純の少年院仲間の明は根岸一正。伸治は伊藤純夫という人。久米の紹介で純が勤める自動車修理工場には、草薙幸二郎がいる。
・純が少年院に入れらることになった強姦事件の被害者は、林春枝。彼女が女中として働くお屋敷のお嬢さんは、まだ14歳ぐらいの久万里由香だ。やっぱり真理アンヌに似ている(久万理は真理アンヌの妹)。
・ラストの釣りをする作家は、黒木和雄だ。冒頭クレジットに特別出演とある。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。