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[コメント] 無頼無法の徒 さぶ(1964/日)

小林旭の傑作。アクション・ヤクザのジャンル物の枷を外れた自由な色気が尋常ではなく、本作の栄二にズボハマり(含原作ネタバレ)。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作既読。原作は栄二が石川島送りになってからの展開がとても長く、さぶ(三郎)の活躍は意外なほど少ない。栄二は犯人が得意先の綿文とずっと信じており、この復讐心が消滅する心境の変化が主題、ここは読ませる。一方、さぶが犯人だと名乗る件は最終章になって突然現れ、それも(映画と同じく)おすえを庇うためだとすぐ判るもので、出来が良い収束とは思わない。タイトルは「さぶ」なのにさぶがマイナーなのを気にかけて大技をかけたがイマイチという感想。美男と醜男の友情という主題は生かされず、ちなみに雑誌で有名なホモセクシャルのテーマは全然ない。

これを映画にするにあたって、制作者がどう考えたか、とてもよく判る作品だ。さぶを副主人公に相応しい人物にしなければならない。もっと活躍させよう。醜男として苦しませよう。早々に犯人だと名乗らせよう。キメの科白を任せよう。

で、映画としては纏まった作品になり、長門裕之もさぶを好演している(高品格のほうが面白かっただろうけど)。ラストの科白はいいものだ。しかし何だか判らない処も多い。小林の復讐心の自らの克服という大きなテーマは長門の科白に集約されてしまい、小林の輝きが鈍った憾みがあるし、浅丘ルリ子の犯罪は許されていいのかという肝心の処は宙ぶらりんのままだ(ここはそもそも原作も甘いのだが)。脚本レベルで方々イマイチの印象。野村孝の演出はいつもながら優れている。

(評価:★3)

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