[コメント] 二重スパイ(2003/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
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期待が高すぎたのか、作品の質が悪いのか、否、作品の出来自体は悪くは無い。ただ、『二重スパイ』と言う題名とストーリーを軽くでも知って居ないと把握し難い前半は如何な物か。年月がさらりと流れてしまうので、今どの様な状況になっているのかわからないまま、唐突にシーンが飛び込む。後半になるとその様な違和感は皆無となるのだが、如何せん盛り上がりが無い。
話自体は練りこまれている、と言うか、見る価値、作り価値のある作品ではあるかもしれない。手堅く仕上げた社会派サスペンスと言うと★1はいくらなんでも低評価かもしれない。しかし、個人的に★1は過小評価でもなんでもなく、極めて純粋な感想である。ただ、スパイ養成シーンや、留学生をスパイとしてでっち上げるシーンをストレートに描く等、南の北に対するスパイ活動や水面下の動きを描いた所を評価して★2。その点からは製作サイドの意気込みは見えてくる。
が、しかしさぁ、大体この手の話ってのは、圧倒的な緊張感が持続するべきなのだが、この映画ではどうも緊張感が薄い。冒頭のベルリンのシーンから拷問に至るまでのシークエンス(って言うの?)は良いのだが、その後は一気に緊張感が消えている気がする。大体あれだけ緊迫感溢れるオープニングで期待させ、拷問シーンでさらに期待させた挙句、なぜか亡命者のスパイ訓練してるんですよ?AK47の銃声の音の解説してるんですよ?僕はてっきり北朝鮮に舞い戻ったのかと思いましたよ。
それからオープニングのマスゲームの合成。確かに良いんだけど、多少アラが見えた。まぁここに突っ込んでもどうしようも無いのだが。
で、映像的な物に文句をつけるのはこの一箇所程度だが、問題は話にある。元々頭の悪い俺はストーリーが複雑になるに連れて絵だけを見るようになる。だが、この話は要するに「北から偽装亡命したスパイが、韓国情報局で働きながら北の指令を実行していくが、ある日北の同士のDJが情報を自分に伝えなかった事により北から終われ、さらに正体がバレて南からも追われて行き場を失ってジャーナリストの手引きにより、リオディジャネイロに亡命。そこで射殺されTHE END」って訳だよね?要するに。
まぁ話としては硬派な、渋めのスパイ映画って気分がして良いのだが、中盤に緊迫感が無い事と、話に強弱と言うか、アクセントが無いので、中盤はダラダラと同じテンションで繰り返されるシーンの連続に眠気に襲われる。退屈。
クライマックスもクライマックスとはあまり思えない程盛り上がりに欠け、先の展開も簡単に読める。大体主人公は「死ね、と言われたら死ぬだけだ」と言う追い詰められた台詞を言って居る割に、どうも焦っている様にも思えず、周囲の人間も彼を疑っているようにも見えないので、全く緊迫感は無い。どうしてそれで、クライマックスに緊迫感が生まれるだろうか?生まれる訳は無い。
そして何よりも恋愛部分。即席で取り付けたかの様な希薄な恋愛。突然「あなたが・・・」みたいな事を言い始める。突然。確かにこの手の話で、恋愛をスパイスとして絡めるのは良いのだが、その恋愛が上手く機能していなければ絡める意味が無い。この映画はまさにその典型、恋愛はわざとらしく古典的で、しかも必要性を全く感じない。感情なんて見えてこない。
もしかしたらラストで主人公を殺した黒人は北の人間で、その北に情報を流したのは女なんじゃないのか?ひゃー、恐ろしい。
恐らくラストの黒人は南ではない事は確かでしょう。しかし、あれが北である、と言う確信はありません。一体誰なんでしょうかね。この手の話でその様な消化不良を残してどうするんだ?あのシーンって観客を唖然とさせる衝撃的な悲劇のラスト、では無いのか?そんな消化不良的な物を残したまま終わられたら感情移入なんて出来たものじゃない。だから、ただの定番ラストにしか見えない。
まぁ要するにスパイ活動っちゃ命がけ。って話なんだね。
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