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[コメント] アミテージ・ザ・サード[ポリ・マトリックス](1996/日=米)

どっちがというと、私はOVAの方が好みですが、やっぱり傑作という評価は変わりありません。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 『ブレード・ランナー』を思わせる世界観と、アニメならではの表現を用いて作られた好作。アメリカの資本を用いて日本で制作されたアニメーションで、豊富な資金のお陰でキャラの動きや世界描写はしっかりしており、何よりストーリーがとてもしっかりしているのに好感を持てる。

 本作は元々OVAとして作られたのだが、好評を博したため(これが日本ではなくアメリカであるのが面白い)、再編集が行われ、劇場で公開されたのが本作。

 さすがアメリカと言うところで、キャラの声を当てているのもそうそうたるメンバーで、主役のアミテージとロイにはエリザベス=バークレイキーファー=サザーランドが声を当てている。日本語版(この場合、吹き替え版とは言わないと思う)での声優より自然に演技していた。

 日米合作OVA(と言っても私が知ってるのは少ないけど)は日本ではあまり描かれることがない、社会問題を直視しているのが特徴で、この作品に関しても、感情を持ったロボットという存在を人間側はどのように捉えるのか、と言う問題が核にあるため、単純なアクション作品ではなくなっており、人間に使役されるロボットという存在の悲しみや主張が強く出ている。脚本は海外SFをよく学んでいることが窺える。

 それとは別個だが、私の好みとは、満身創痍の主人公が更にボロボロにされつつも、決して諦めず、立ち向かっていく姿。アニメはなんと言っても『宇宙戦艦ヤマト』(1977)の特攻の姿は格好良いし、小説では友人から推薦されて読んだ第二次世界大戦のイギリス軍艦をモティーフとした「女王陛下のユルシーズ号」がとにかくお勧め。

 この作品はまさしくその、私が観たかった描写をしっかりやってくれている。アミテージは自分自身が“サード”であると言う悲しみを負いつつ、死んでいった仲間達のために戦う。彼女は常人を遙かに超える力を持ちはするが、精神的には決して強くなく、時にロイに支えてもらいつつも、最後はロボットの未来のために特攻的な戦いを余儀なくされていく。特に最後の戦いは、倒しても倒しても次々とやってくる敵を前に、徐々に戦闘能力を失い、それでも立ち向かっていくという、極めて格好良い姿を見せてくれた(あのシーンで音を廃したのは無茶苦茶はまってる)。

 はっきり言えば、無茶苦茶好みな作品だ。あんまり知る人はいないけど、隠れた名作と言いたい。

 尚、本作はOVA版と劇場版ではラストが違っている。ハッピー・エンドという感じで終わるOVA版、虚しさを強調した劇場版…ストーリー自体に救いがないから、ハッピー・エンドの方が好みだね(続編はOVA版をベースにしてるし)。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)HW[*] さいた[*]

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