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[コメント] チャップリンの舟乗り生活(1915/米)

設定のアイデアの中に生きる芸が見当たらないBADサイレント
junojuna

 エッサネイ期中期はチャップリンのディレクションにおける苦闘ぶりが垣間見えていかんせん芸の飛翔ぶりが感じられない残念な仕事として物足りない出来栄えである。作品の全権を担うという立場による自由さがかえって余地を持て余すといった空回り的な帰結が気にかかる。確かに、後年の傑作『黄金狂時代』の原点となるアイデアにそれなりの才気は見せているのだが、その設定を生かしたチャップリンの芸のインパクトというものが伝わってこずバランス感覚が鈍い。どこかもう一押しな感が欠乏感を伴って頷き難い印象である。チャップリン曰く「ミューチュアル社で働いていたころが一番幸せな時代だったかもしれない」と後年語っていたことを思うと、この時期、やはり仕事ぶりは旺盛に見えてもどこか悶々と模索を繰り返していたのかもしれないと思えてならない。そう捉えれば、よくキーストン時代と合わせて50本と括られるエッサネイ期のフィルモグラフィは、まだチャップリンの黎明期として一括りの様相を呈している。

(評価:★2)

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