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[コメント] やくざ絶唱(1970/日)

これはいい!粗も目立つが、しかし良いシーンのテンションの高さは得難いレベルだ。やっぱり、勝新太郎の力は大きい。勝新一人で、これだけ画面に緊張を与えることができる。妹役の大谷直子もいい。
ゑぎ

 これは増村のディレクションの賜物だと思うのだが、それでも素晴らしい。彼女の口跡が増村特有の口調の演出によく合っている。さらにどこを見ているか分からないような(というかそっぽを向いている)時の思い詰めた表情の作り方も実に上手くいっていると思う。対して、勝新の情婦−太地喜和子は、アクション(所作の見せ方というか暴れ方)はとてもいいのだが、口跡の良さは大谷に完全に負けている(というか増村映画に合っていない)と思った。

 とは云え、最も亢奮させられたのは、勝新が妹−大谷の見ている前で、太地をレイプしようとする場面の彼女のアクションかも知れない。そういう意味で、太地は充分に役割を果たしている。ただし、大谷には4人の男優とのベッドシーンがあり、セクシーな見せ場ということでも大谷の方が得な役回りだ(4人ってどういうこと?と既に見たことのある人は感じたかも知れないが、4人の中に勝新も入れている)。ベッドシーンではないが、大谷の出番で最も良いと思った画面は、唐突に海の中にいる大谷と田村正和が繋がれるシーンだ。砂浜に2人で横たわり、抱き合ってキスしながら回転する演出。大谷はビキニ姿で、2人の肌が黒い砂まみれになるショット。こゝも非常に強い画面だと思う。

 というワケで、本作も同年の『でんきくらげ』(渥美マリ)なんかと同じで、途中から大谷直子の乳首探しゲームの様相を呈する映画です。これが、いずれもとても微妙な露出なのだが、確かに2箇所見えた(探し当てた)と私には思えました。彼女が高校教師−川津祐介のアパートへ行く前に風呂に入る場面と、田村とのベッドシーン後の会話場面の2箇所。ちなみに、本作は『肉弾』(大谷直子の長い全裸シーンがあることは皆さまご存じの通り)でデビューした後、NHKの朝ドラヒロインを1年間務めた後の(当時は1年間だった)映画出演2作目だ。

 あと、書くのが遅くなったが、勝新の見せ場もあげておこう。アバンタイトルで既に、舎弟の青山良彦が敵対する東風会のチンピラ−若き平泉征らに痛めつけられているのを勝新が助ける良いファイトシーンがある。これがまさに電光石火のようなパンチの繰り出しだ。あるいは、太地の勤めるバーでの暴れっぷりも凄い。店内でチンピラ4人(こゝも平泉が目立つ)と喧嘩を始め、相手もなかなか強く、勝新も結構やられるが、結局チンピラ4人だけでなく、止めに入った警官2人もボコボコにしてしまうというシーンだ。また、本作でも多くの会話シーンで増村らしいツーショットのドンデン(180度のカメラ位置転換)が使われるが、いやそれ以上にきめ細かなカット割りが目立つと感じた。これは勝新の動作に合わせたものだろう。そしてラストの銃撃シーンの迫力も特筆したい。3カットでポン寄りのように勝新に寄る繋ぎもいい。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・大谷の父親は加藤嘉。勝新と大谷は異父兄妹。母親は加藤の妾だった。加藤の正妻は荒木道子。田村正和は加藤と荒木の養子。

・勝新の組の組長は内田朝雄。東風会のボスは『ドラゴン怒りの鉄拳』の橋本力

・大谷が加藤の紹介で働く会社の社長は早川雄三。オフィスにいる客で伊東光一

・トルコ「ニューふじ」の店長は中田勉。刑事で仲村隆

(評価:★4)

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