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[コメント] からみ合い(1962/日)

岸恵子の仰角ショット。後景のビルの窓ガラスに太陽光が反射して彼女の頭上ギリギリから逆光が差し込む。武満徹によるジャズの劇伴。カッコいいオープニングだ。銀座を歩く岸(東銀座6丁目への行き先案内板が見える)。
ゑぎ

 ウィンドウの商品を見る岸が、いきなり腕を掴まれている。宮口精二の登場。岸の心の声モノローグで、「イヤな日になった」みたいな。立ち話もなんなんで、どこかでお話ししましょう。こゝから時間が2年前に遡る。繋がれるのは、山村聡の社長、社長秘書の岸、秘書課長−千秋実が歩くショットだ。

 本作は山村聡が胃がんを宣告されたことから始まる、遺産相続をめぐる関係者の確執、ゴタゴタ劇を描いたものだ。大雑把に云って遺産は3憶。妻の渡辺美佐子との間に子供はいないが、女中などに産ませた隠し子が3人いる(現在どこにいるかは分からない)。1億は渡辺に行くとして、残りの2億をどう分けるか、山村がどう遺言を残すかというのが焦点になる。というのも、山村は、隠し子が遺産を相続するに相応しいか、自分が判断する、と云うからだ。

 前半は隠し子3人の捜索場面及び現在の状況がクロスカッティングで繋がれる。秘書課長の千秋が捜すのは千石規子の子供で小さな女の子。顧問弁護士−宮口精二の部下−仲代達矢が捜して来たのは、ストリップ小屋でヌードモデルをやっている芳村真理。そして、岸は鵠沼でたむろしている不良学生の中から川津祐介を見つけ出す。3組それぞれの関係性も一筋縄ではいかない捻った描かれ方で面白い。特に仲代と芳村のシーンは見応え十分だ。しかし、岸と川津の関係については中途半端だと思う。2人がイルカショーを見る場面の簡潔な演出なんて良いと思うが、川津が岸にゾッコンになっているのは唐突過ぎるし、何も機能させない作劇だ。後から考えると、岸の作戦だったのだろうか。だとしたら、欠落したシーンがあるとしか思えない。

 岸は社長秘書なので、度々社長の自宅で仕事をする様子が描かれるのだが、台風が思ったよりも早く来て、岸が帰れなくなった夜、山村は、妻の渡辺に迫り逃げられる。次に、岸の寝間に酒を持って入ってくる、というシーンも、岸の抵抗が案外おとなしいのは、既に岸には打算があったのだろう。

 そして、ハイライトは矢張り、関係者を皆集めての、遺言発表の場面だ。川津が騒ぎながらやって来て、仲代と宮口に追い出され、入れ代わりのように、刑事の安部徹が乗り込んでくる展開は、やり過ぎと云うか、演劇的過ぎるとは思うのだが(これを非現実と嫌う観客もいるだろうが)、しかし、人物の配置とトラックバックするカメラによって、その場の人物の、唖然とする様子を定着させる演出は、悪くないと私は思う。

 あと、仲代と渡辺が、何度か2人で会うシーンを挿入するが、思わせぶりな演出で終わってしまうのは残念だ。この2人の濡れ場もあったら良かったのに。その方がタイトルの「からみ合い」の感覚が、もっと出ただろう。

 主演の岸は勿論、渡辺も芳村も加えた3人の女優の悪女の造型はそれぞれに見応えがある。いや渡辺や芳村が岸を食っている、と思わせられるところもあるが、終盤の、衰弱している山村を見て涙する岸の場面で、私は岸がポイントを取り返したと思った。いったん走って洗面所へ行き、顔を整えてから、また山村の枕元へ戻るという時間の使い方がいい。さらに、平幹二朗との短い絡みもいい。

#備忘でその他の配役等を記述します。

・私が見たのは、タイトル・クレジットもエンドマークも出ない版だった。

・山村の友人で病気について相談する大学教授は信欣三

・千石の隣人に菅井きん。千石は、子供は沼田(群馬県)に預けていると云う。

・芳村の家族。母親は槙芙佐子、義父に浜村純、姉がおり、川口敦子。芳村のストリップを見る客で三井弘次。芳村と仲代が入る店の女中は水木涼子

・川津の家族。母親は北原文枝、義父に北龍二。川津の不良仲間には若き蜷川幸雄がいる。彼らを見張っている警官で佐藤慶。川津がバーで喧嘩する(喧嘩を売って来る)男は田中邦衛

(評価:★3)

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