[コメント] きけ、わだつみの声(1950/日)
滴るような死と、絞られるような死。あなたが絞られるとき、あなたは何に縋(すが)るか?
鑑賞前に抱いていたイメージとはうらはらに、非常に詩的で観念的で、そして冷徹な映画であった。冒頭、泥の中から信欣三らが這い出るシーンから、あっと思って画面に集中していたのだが、ハイキーとローキー、画調のコントロールも巧みで、役者に対する演出(特に自然な発声のさせ方)も適切、台詞はどれも深く印象的という、良い意味で制作年代を疑わせるような、正に語り継がれるべき名作である。伊福部昭の如何にも伊福部昭らしいメロディも、作品テーマに備わる重厚さと慎み深さを増幅させている。
目前に迫った死を控えて兵士達は何を思い、何を口にするか?在る者は母の、在る者は恋人の名を叫び、また在る者は過ぎさりし良き日の思い出を懐かしむ。在る者はモンテーニュの詩に耽溺し、在る者は亡き友の意思を継ぎ、その馬鹿げた戦争を終始せんと歩み、歌声をふりしぼる。
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