[コメント] 黒薔薇昇天(1975/日)
誰かがケーブルに引っ掛かり、もう一回、という場面。これ、エピローグでも同じことをやる。芹明香と谷本一の濡れ場の撮影だ。本作、女優は芹と谷ナオミのみ。東てる美も顔見せ程度に出てくるが、誰とも絡まない(歯医者の患者役)。
大阪を舞台とし(冒頭シーンは和歌山か?)、コテコテの大阪弁を喋る岸田森の熱演が有名な映画だが、神代の演出も、才気走ったコメディタッチが快調な出来栄えだ。例えば、電車の中の岸田が、窓から顔を見せ舌を出すカットに繋げて歯医者で舌を出す岸田のカットを持って来るマッチカッティングだとか。あるいは、濡れ場の音響製作のシーン、天王寺動物園で録音したり、猫にミルクを舐めさせて録音したりして音を作る場面だとか。
また、岸田が谷を呼び出すのは、心斎橋のPARCOの大きな看板前だが、彼女を口説くために最初に連れて行く淀川べりの貸し船屋が、いい風情だったり、デパート(多分、松坂屋)の屋上だろう、観覧車の場面は、見事なワンシーン・ワンカット演出なのだ。あと、谷が愛人の尻を舐めるカットに、夜の公園で赤い椅子を持って走る谷のカットを挿入する処理なんかは、神代らしいフラッシュフォワードだ。
というようなことで、中盤は、しっかりした濡れ場が無く、ちょっと寂しい、と思いながら見ていたが、岸田と谷が結ばれるシーンは、長いし、とても迫力がある。スウェーデン製のブルーフィルムを見せるところから始まり(スウェーデンへ行って撮ったと嘘をつく岸田)、途中で、下半身部分のフォーカスが合わなくなる処理があり、カメラとライトが入ってくる。この濡れ場の後、ローラースケートを履いて廊下を滑りながらの後背位、というジョークのようなカットが挿入される繋ぎも可笑しい。終盤の「行ったらあかん!」の連呼も可笑しい。
#BGMで、宇崎竜童の「買物ブギ」、奥村チヨ「終着駅」、「愛染かつら」の歌。
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