[コメント] ホフマン物語(1951/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
経時的に見るのが、一番分かりやすいと思うので、年表を掲げる。(ウィキペディアを基に省略、加筆した)
1851年 作曲家オッフェンバックが、作家バルビエの戯曲を観劇。オペラにしたいと思う。
1880年 オッフェンバック死去。オペラは未完。(長期間経っているが、色々あった。この稿には関係ないので触れない)。そして友人ギローが補作曲し、完成させる。
1881年 パリ、コミック座で初演。
1887年 コミック座の火災により、楽譜が消失。(当時は劇場が初演楽譜を保管するのが習慣だった)。→そしてこの消失により、これ以後多くの版が生まれることになる。ざっと調べただけで15種以上あった。
1907年 シューダンス版発表(長く定本となる)。
1951年 映画化(本作:シューダンス版を基にしたアランデル版(英訳)。更にバレエ導入の為に一部改変している)。
1958年 演出家フェルゼンシュタイン版発表。
1970年 再映画化(監督:フェルゼンシュタイン本人)
1976年 オッフェンバックの自筆楽譜他が大量発見される。
1977年 エーザー版発表。(フェルゼンシュタイン版の改訂版)。→これが定本と言えると思うが、これ以後も幾つも版は出ている。
まさに数奇な運命のオペラであるが、私の疑問‘ミューズの登場’は、シューダンス版のエピローグで出て来る。ホフマンの魂の救済の為だ。しかし、ラストに突然出現するので、おさまりが悪く、それなら最初(プロローグ)から出した方がいい、すなわちミューズ(芸術の神)がニクラウスに変身して、ホフマンを守護して同行するという形にしたのがフェルゼンシュタイン版(→エーザー版)だった。この方が私はよいと思う。
そして3つの物語の件だが、その順番がオリンピアの話→ジュリエッタ→アントニア(本映画でもそう)なのを、フェルゼンシュタイン版が、オリンピア→アントニア→ジュリエッタにした。これはホフマンが学生→青年→成人(熟年)と成長する年代順に並べたのだ。私もこれの方がすっきりとして良いと思う。
参考文献・ホフマン物語 ジュール・バルビエ台本 新書館 ’88 訳:安藤元雄 (これはエーゼー版+シューダンス版+他版)
・ホフマン物語 名作オペラブックス14 音楽之友社 S63年 (これはエーザー版の校訂新盤)
更に、 参考1:フェルゼンシュタイン版とエーザー版の違いは、前者でジュリエッタが誤って毒を飲んで死ぬという形になっている事だ。本映画では、そうではなく、ジュリエッタと悪魔が船で去って行く―あのシーンは良かった。
参考2:映画は、オペラファンには一部不評(バレエを入れた為、邪道)らしいが、序幕のバレエについて詩人佐藤春夫が書いている(「群像」’52 7月号)。「蜻蛉が交尾とともに雄を喰い殺すところを現わした踊り」と。私はよく分からなかったが、それが正解かも。異様だが、引き込まれた。
一番良かったのはやはり歌曲で、有名な‘ホフマンの舟歌’の他にも‘クラインザックの伝説’(㏌序幕)、‘二人が愛した歌’(㏌アントニアの幕)。特に前者が風刺、諧謔のオペレッタの巨匠オッフェンバックらしくて良い。ラウンズヴィルの出来も最高だ。もっともコミカルソングなので、そう言われるのは彼としては不本意かもしれないが。
本映画はバレエも歌曲も挿話も、個々には素晴しいが、全体としてみた場合、やはり4点だろう。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。