[コメント] ジョルスン物語(1946/米)
やっぱり、ほら、初トーキー『ジャズ・シンガー』の主役として興味を抱いて観るわけじゃないですか。そこが全然見せ場にも何にもなっていない(「映画撮ったよー」的な報告程度しか無い)のがね。
主人公の能天気さとあまりのマイぺースっぷりがどうにも無神経で嫌。ま、元々、昔の米国映画の主人公なんて、そんな連中で溢れ返ってはいるんですけどね。プロポーズシーンには、人格の卑しさすら感じた。どう見ても、ただの代償行為で目をつけただけにしか見えないし。プロット的にも、終始このジョルスンさんに都合のよすぎる展開が、喜劇としてのテンポのよさを優先したのだろうことを考慮しても、単調に過ぎ、次第に飽きてくる。ジョルスンの伝記的事実から色々省かれた脚本、という事情以前に、一個の映画としてあまりに大雑把。
列車での別離シーンがあっさりしすぎていて情緒を掻き立てないのもマイナス。観客を泣かせ笑わせる為の「伏線」とか「溜め」が全く利いていない。「客席から歌い上げる」という行為の反復も、多少ともまともな演出家なら、そこで観ているこちらの心がパッと明るくなるようなシーンに仕上げてくれる筈。全篇に渡り、パッパパッパとシーンを処理しているだけという感じ。
それに、「観客の顔を見たい」という彼の台詞をテーマ的に活かすような、彼を応援する観客一人一人の存在感が感じられないのが致命的。座って笑って拍手してる画でしかない。加えて、照明の都合で客席が見えない舞台と違って、演じる際にそもそも観客が存在していない「映画」に対する思いが全く描かれていないのが、姑息な逃げにしか見えない。
冒頭シークェンスの、少年エイサ(ジョルスン)がショービズ界に入っていく過程はワクワク感があって良かったのだけど。
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