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[コメント] キカ(1993/スペイン)

本作も赤色の映画。多くのシーンで人物の衣装や家具調度品に赤色が溢れる。オープニングはグラナドスのスペイン舞曲5番。
ゑぎ

 鍵穴から覗いたイメージで、服を脱ぐ女性のショット。これはスチル写真の撮影現場で、カメラマンはラモン−アレックス・カサノヴァス。スタジオでの下着の広告の撮影シーンだったということだ。次に赤い車に乗る、赤い上着のラモン。車を停めると銃声。無理やり鍵を開けて家に入ると、手を怪我したニコラス−ピーター・コヨーテが出て来る。ママはバスルームで死んでいる。自殺した。ニコラスはラモンの義理の父か。この冒頭は大過去。

 続いて現在の場面で、タイトルロールのキカ−ベロニカ・フォルケは、メイクアップアーチスト。彼女の回想で、2年前、アメリカ人小説家のニコラスと、その息子のラモンに出会ったエピソードのフラッシュバックが入る。テレビ局でのメイク仕事。ニコラスの家に呼ばれて、メイクラブできると思って喜んで訪ねるが、息子が死んだ、死化粧をしてくれ、と頼まれる。化粧していると、温もりが。生きている。こゝで、ラモンの顔から駅のホームの屋根にディゾルブで繋ぐのだが、こゝもまた、大仰なグラナドスの音楽がかかるのだ。これが2年後の現在への時空の超越処理になっているのだが、実はこのカッティングが全編で一番ドキドキさせられたかもしれない。

 この後、キカとラモンが一緒に暮らしているアパートにニコラスも越してきて別フロアに住むようになるが、ニコラスは女たらしでキカだけでなくキカの友人とも関係し、さらに昔の女も訪ねて来て、といった展開が描かれる。結局、メインのプロットをドライブするのは、私にはキカよりも、主にニコラスのように感じられるのだが、しかし、実は最も面白いキャラクターは、ビクトリア・アブリルが演じる、テレビ番組「今日の最悪事件」のキャスターと、キカが雇っているメイドのフアナ−ロッシ・デ・パルマの脇役の2人だと思うのだ(アブリルは脇役と云ってもかなり大事な役回りだが)。

 まずは、とにかくこの2人のルックスがいい。唐突なアブリルの登場は、ティルトアップで衣装を見せるショット。胸にフェイクの乳房がある、というのが面白い。また、顔の右側にはキズがあるスカーフェイスだ。メイドのロッシ・デ・パルマは近作(『パラレル・マザーズ』)でもラストまで絡む役で投入されているぐらいの人だが、一度見たら忘れられない巨女なのだ。でも、可愛げもあるので大好きです。本作では、彼女の弟パブロの扱いが、笑えないコメディパートで、本作の評価を下げる要因になっていると思えるが、パブロのシーンの彼女もとても良かったと思う。

 そして、何と云っても、恋多き女のキカが、もっと魅力のある女優であれば、と思ってしまう、主演女優がイマイチ、というのが本作のウィークポイントだろう。こう云っちゃ可哀想だが、私には綺麗とも可愛いとも思えない。これがペネロペ・クルスだったら、というのは無い物ねだりだが、どうしても、そう思わせられてしまうのだ。

(評価:★3)

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