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[コメント] 高校生ブルース(1970/日)

圧倒的に言葉足らず、説明足らず、エピソード足らずだと思う。だが演出の生まじめさ、堅苦しさは、すべてを補ってあまりある。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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母親の親友で、実父の死後、父親代わりになってくれていた“おじさま”を、関根(高橋)恵子が評して、「清潔な人よ」と言う。今ではあまり聞かれなくなった表現だが、いい表現だなと感じ入った。俺もこの関根恵子に「清潔な人」と言われたい、という欲望がむくむくと沸いてきた(←この時点で不純だが)。

人工妊娠中絶の費用が1万円だというのも、安っ!と思った。もちろん貨幣価値が違う。当時の大卒初任給って、1万5千円ぐらいか。大雑把に言って、今の10万円。高校生のする1ヶ月程度のアルバイトで貯まるのか?という気はするが、それでもまあ、安いわな。今から40年以上も前の日本映画だが、国によっては現在でも中絶を認めるか認めないかが首長選びの争点になるのに、なんと日本の進んでいることよ。いいか悪いかは別として。

高校生が高校生なりのやり方で、方を付けるという話になっている。圧倒的に言葉足らず、説明足らず、エピソード足らずだと思う。だが演出の生まじめさ、堅苦しさは、すべてを補ってあまりある。未熟な高校生ならではの、思い込み、かたくなさ、大人たちが汚く見えること、などをよく表現しているからだ。「そういうことは、みんな昇さんが考えてくださると思っていた」美子(関根)が、物事の重みを自分一人で受け止め、思い詰めて、自分一人で“解決法”を考え出す。その純粋さという一点において、と言うより、わずかにその一点においてのみ、健全であると言える。だからこそ、美子が、決然と、朗らかな表情で前を向いて歩いて行くラストシーンに意味がある。現実には、あんなことをして母体にいい影響があるわけはなく、精神的にはおろか、肉体的に後遺症が残らなければ、むしろ幸運であるだろうにしても、だ。

まあ、当時の高校生の性知識がこの映画で描かれる程度だったのだとすると、かえって間違った性知識(堕胎法)を植え付けてしまうことにならないだろうか、とは少し思った。その意味でも、性教育ってやっぱ重要なのだなあ、と思ったことだった。

80/100(13/03/31見)

(評価:★4)

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