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[コメント] 憧れのハワイ航路(1950/日)

岡晴夫の大ヒット曲を元にして映画化され、岡が主演も務めるが、助演者で少女時代(12歳頃)の美空ひばりが出ていて、彼女の方が目立ってしまっている。というか、明らかに、ひばりを目立たせようという意図で作られていると思う。
ゑぎ

 岡の歌唱場面は、タイトル曲及び、本作主題歌「憧れのブルーハワイ」と、もう一曲ぐらいだが、ひばりには「ひばりの花売娘」の他、短いフレーズのものもあったが5曲ぐらいは唄ったように思う(岡とのデュエットもある)。それに、彼女が画面中央で唄う場面を花菱アチャコら他の助演者が脇で一所懸命盛り上げているようにも見えるのだ。そして美空ひばりの芸達者ぶりにも(演技も歌唱も)あらためて感心させられる。

 ただし、上に書いたようにあくまでも岡が主演で、ひばりは助演者だ。プロットのメインは、岡がハワイにいると思われる父親と再会できるか、というもので、岡と同居人の古川緑波の(2人の)恋愛譚や、この2人が下宿している家の女将さん-清川玉江の生き別れた娘(姉妹)との関係がサブプロットであり、清川の娘の一人が美空ひばりだ。もっとも、清川と娘の関係修復というサブプロットが、思いの外フィーチャーされてしまっている、という見方もできると思う。

 あと、素人役者-岡晴夫の、映画俳優としての資質についても感じたことを書いておこう。本作では、リスクヘッジが働いたのかどうか分からないが、科白も少なめなのだが、私はとてもよくやっているし、主演者として立派に映画を成立させていると思った。比較するのは良くないかも知れないが、当時の流行歌手の映画出演でいうと、近江俊郎春日八郎よりもずっと上手く、田端義夫と同じぐらいには自然に演じていると感じた。

 というワケで、映画らしい手の込んだ画面ということで云うと、ほとんど見せ場の無い演出とも云えるのだが、2人の歌手の歌唱シーンとロッパ、アチャコ、清川といった一線級の脇役たちが盛り上げて、楽しい歌謡映画に仕上がっている。尚、タイトルにあるハワイの扱いについては、登場人物の誰かが降り立つ、というような場面は一切なく、しかしタイトル通り、ハワイへの憧れは描かれている。冒頭クレジットバックが、ハワイの人々のダンスを繋いだもの。クレジット開けも岡の歌唱(「憧れのブルーハワイ」)をバックにダイヤモンドヘッドや、砂浜を水着で歩く人々、大きくてクラシックなホテルなんかを映す。また、劇中、岡が写真を見ながらハワイを回想する場面でも、ホノルル(?)の街中の映像や、ダンスする現地の人が映る。さらに、明確なフラッシュバックとは云えないかたちで、何度か、海のショットが挿入されるのは、岡の部屋の窓から見える海の風景なのかも知れないが、私はハワイのイメージが挿入されているのだと思いながら見た。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・美空ひばりの姉は柴田早苗。輸出用の手製人形を作っている。人形の納品先は木戸新太郎(クレジットではキドシン)。その母親は吉川満子

・ロッパが似顔絵描きをするキャバレー「パシフィック」。馬面の客で小倉繁。ロッパがいつも立ち寄るパン屋の娘に杉山よし子

・キャバレーでの喧嘩シーンで出てくる支配人みたいな男は伴淳三郎

・岡の父親役として汐見洋は出ていない(クレジットにも名前はない)。

(評価:★3)

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