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[コメント] 憧れのハワイ航路(1950/日)

主題歌のようにカラッとした喜劇と思いきや寅次郎らしからぬ湿気充満の新派劇で驚き。こんなによく泣く清川玉枝は珍しいだろう。『ハワイ・マレー沖海戦』から10年足らずでこんな映画つくって悦んでいる邦画の無節操もどうかと思うし。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ハワイ残した生き別れの父を想ってギター弾く岡晴夫という設定は、美空ひばりと姉の柴田早苗、未亡人になって虐められて逃げた母との行き別れと再会の清川玉枝という新派劇にアダプトされて、旧態依然の泣かせが延々展開される。主題歌のようにもっとカラッとした映画だろうという期待は見事はぐらかされた。

ひばりの花売り娘は最強の感があり、歌唄って酔客に花を売り切ってしまう。しかし姉の許しで親子許し合い泣き濡れた後で、ひばりが何曲も続け様に唄うのは契約上のノルマ消化めいていてシラケるし、演歌調が多くて違和感がある。岡の親子話は、最後に父から一緒に果樹園をやろうと手紙が届いてハワイに帰るという適当で処理される。ハワイの映像はどこかから持ってきた観光向けの酋長ダンスというのも適当。

ロッパとパン屋の久美子さん(杉山よし子)の件がちょっといい。彼女はロッパが好きだと云ってアチャコから渋好みと褒められている。ロッパが消しゴムに使っていたパンにバター塗った好意で設計図が失敗になって、喧嘩して仲直りしている。もの云わぬパン屋の亭主のコメディが面白い。

岡晴夫(OPに「楽団ニュースター」とある)は最初から演技指導を諦めたような茫洋とした造形だがそれなりに面白い。伴淳が気障なクラブの雇われマスター役で登場、喧嘩したバンドマンを退場させ、そこで何の義理なのか岡晴夫はアコーディオン弾いてタイトル曲を唄って帰りかけた客を引き留める他、オーラスのハワイ行き客船のデッキでもギター持って唄っている。岡とロッパは師匠の命日だとキリスト教の墓前で岡が歌唄っている。本作も敗戦直後らしいキリスト教映画だった。新東宝作品。

(評価:★3)

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