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[コメント] 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964/英)

核抑止を描いた「傑作」が見たいのなら『未知への飛行』を、一級のブラック・ユーモアが見たいのなら本作品を。
Walden

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「これは笑うべきなのか?」という思いの混じった引き攣った苦笑を誘うブラック・ユーモア。

 冒頭に出てくる断り書きでさえ、見終わった後に「あれすらも皮肉なんだろうか」と思わしめる。

 ピーター・セラーズ が演じる三者の理屈は、いずれも筋が通っているようで根本的なところでどこかおかしく、それらがブレンドされることであの作戦本部室は異様な空間になる。

 「核戦争」=「共滅」という、ユーモアをかぶせるには深刻すぎる題材が、この映画をどこまでもブラックなものにしていく。また、完全におちゃらけるのではなく、核兵器投下までの手続きなどをしっかりと描くことで、同時にリアリティを持たせることに成功している。

 「笑える、でも笑ってはいけない」というこのジレンマが、観るものの想像力をかき立てる。

 最後に出てくるキノコ雲の映像。場違いな音楽を聞き、そして苦笑しながら、我々は、あれによってどれだけの人が死に絶えるのか、そしてどれだけそこに至までの過程が、「実は」身近に存在するのかを思う。

 映画を見終わった後、ふと思う。「これは全部冗談と笑い飛ばせるほどにリアリティを欠如しているんだろうか?」

 キューバ危機直後の冷戦期に生きた人々が、どのようにこの映画を見たのかは気になるところ。僕らが見るのとはまた全然意味が違うだろう。

(評価:★4)

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