[コメント] 突撃(1957/米)
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キューブリックがチェス好きなのは有名な話だが同時に彼は映画監督でもあるわけだ。ここに共通するのは駒を自在に操って目的を達成する事だろうか。チェスの場合駒が突撃命令に背いてぐずる事はない。失敗は全て己の問題として帰ってくる。映画の場合はスタッフが突撃命令にぐずる事は十分ありうる。しかし失敗は監督の責任なんだな。
作品にもし、監督の思想に似通った人物がいるとすれば通常は主人公だ。チェスや映画制作の現場で言うなら主人公は盤上のリーダーであり現場をまとめる人という感じだ。キューブリックはもっと俯瞰出来る立場の人である。そうなると彼に似た人と言うのは大将や将軍と言うことになる。多くの方が言う様に突撃のシーンは盤上を眺める視点だ。
では、何故自分と同類の軍上層部をこうまで悪く言えるのか?恐らくだが彼から見たチェス相手、映画監督という同業者 を見た視点ではないだろうか。彼の視点はどう見ても「神から見た人間の権力者」なのだ。
ところがこの映画はその肝心の視点が一定ではない。所々で市民的になったり神視点に切り替わったりするのだ。反戦と一言で言ってしまえば簡単だがお前は結局何が言いたいのだ、と感じるのは恐らくここら辺が腰が据わっていないからだ。それはよく言われているようにカーク・ダグラスという「駒」が反乱を起こして視点がふらふらしてしまったせいだろうし案外この映画の彼的失敗はやはり「兵隊が思い通りに動かなかった」という事に尽きるのではないか。皮肉なものである。
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