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[コメント] 安藤昇のわが逃亡とSEXの記録(1976/日)

一種の伝記として考えるなら本作は非常に興味深いですが…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 70年代、『仁義なき戦い』(1973)に始まり東映では実録もののやくざ映画(これは私の勝手な分類だが、60年代のものは「任侠映画」70年代のものは「やくざ映画」と呼んでいる)が相当な量作られてきた。その大半は実際暴力団に籍を置いていた人物が書いた手記を元にしたもので、基本的に実話をベースとしている。

 それでそういった実録ものの中で最たるものは、まず『北陸代理戦争』(1977)がある。これは原作者が実際にまだ足を洗っておらず、映画の中にまで登場し、さらに映画公開後に暴力団の抗争によって殺されたという、現実世界と映画がリンクしてしまった例として挙げられるのだが、別な意味で極北を示すのが本作であろう。

 なんせ原作者と役者が全く同じ。つまり本作で安藤昇を演じているのが安藤昇本人なのだから。

 安藤昇という人物は1950年代に20代で全く新しい組織“安藤組”を組織した。ものの本によれば、これまでの義理人情の世界から完全決別し、そのファッショナブルな出で立ちは若い渡世人の絶大な支持を受け、非常に若い構成員で構成された暴力団組織になったそうである。しかし、警察によるいわゆる“頂上作戦”によって力を失い、やがて衰退していった。

 その後おもしろいことに安藤は役者へと転向。いくつもの映画に出演することになった。そんな中で、ついに自分自身を演じたのがこの作品だった。

 10年前の自分を演じているのだ。これ以上にリアルな作品はなかろう。結局この点が本作の最大の売りとなった。

 実際の話、物語としてはさほど起伏が多いわけではない。ドンパチは安藤組の構成員に任せ、タイトル通り安藤は、逃げてはそこかしこにいる情婦とセックスしまくってるだけ。リアルといえばリアルなのだが、安藤を目立たせるために、物語がものすごくちぐはぐなものになってしまった。

(評価:★3)

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