[コメント] 黄金(1948/米)
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ボガートの出世作である『マルタの鷹』(1941)で名コンビぶりを見せたヒューストン&ボガートが再び組み、更にヒューストン監督は本作に実父のウォルター=ヒューストンまで巻き込んで作られた冒険譚。見事この年のオスカー監督となった(ウォルターも助演男優賞で受賞しているため、父と子が同じ映画でアカデミー賞を受賞した唯一の作品となる)。
物語そのものが一筋縄には行かず、ついには全てを失っておしまい。という、一種虚しさと悪意のこもったコメディで、冒険の末栄光を手に入れた主人公が暴走して結局全てを失ってしまうと言う形式はヒューストン監督お得意だが、本作はその先駆けとなった作品と言える。
当時のハリウッドはプロデューサの発言力が極めて高かったため、こういった悪意の込められたコメディは滅多に出ることが無く、事実社長のジャック=ワーナーは当初この映画を嫌っていたそうだが、ヒューストン監督が断固として自分の思い通りのやり方を貫いたために興行的にも成功した。パターン的な物語展開は既にアメリカの大衆にも飽きられつつあったのだろう。
感心出来るのは人間関係の変化。最初貧乏状態で出会ったドッブスとカーティンは、ただ同じ国から来たというだけで意気投合し、少ない持ち物を分け合ったり、宝くじが当たると二人でそれを使おうとしていたりしていた。ところが黄金が実際に出てからは、特にドッブスの性格がまるで変わってくる。仲間が人助けをしようとすると強引にそれを止めようともしてるし、最後には黄金を独り占めしようとして持ち出したりとやりたい放題。金ってのは本当に人を変えるもんだな。比較的早めに黄金が見つかってしまうので、これからどうなるのか?と思っていたら、こういう展開になるのか。と驚かされる。一見芸域が狭いようでいてかなり幅広いボガートの演技も堪能出来る。徐々に表情が強ばっていくボガートの顔の演技は必見。一方老人役のウォルター=ヒューストンも怪演ぶりを見せていて、
中盤がちょっとたるくなってしまうのがちょっと難点で、物語上さほど意味のない物語を延々挿入するのは今ひとついただけず。それでちょっと点数の方はマイナス。
『ホワイトハンター ブラックハート』(1990)でも描かれていたが、ヒューストン監督の奇行ぶりはこの当時から有名で、特にボガートがおもしろがって一緒になって悪戯するので、現場は大迷惑だったとか(ウォルターの入れ歯を強引に外したり、鞍に糊を付けて出演者を降りられなくしたりとかと伝えられている)。
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