[コメント] ある愛の詩(1970/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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1967年からハリウッドで起こったニューシネマブームは、一方では映画作りを極めて難しくさせた。これまで豪華な装置と有名俳優を出すことで、そこそこのヒット確定が出来た時代ではなくなってしまったのだ。巨費を投じ、会社の浮沈を賭けて投入した作品が大コケし、碌々予算もかけず、撮影期間も極めて短い作品が大ヒットをしてしまうこともある。と言う皮肉な時代だった(同年の『トラ トラ トラ』は2500万ドルを投じ、1320万ドルしか興行成績が伸びなかった)。
本作はその試行錯誤の中で作られた作品であると言えるのだが、低予算ながら逆にそのシンプルさが受けて大ヒット。4850万ドルもの利益を上げた。
今観ても、なるほど確かにこれ以上ないほどシンプル。更にオニール、マッグロー共に素人臭さが抜けてないが、これまでの技巧を凝らした作品を見慣れている目には新鮮に映る。それに自己主張をしないながら、耳にこびりついて離れないフランシス=レイによるスコアも素晴らしい。
それに親に反発するだけでなく、自立するという設定もおそらく当時の世相に合っていたのだろう。極めてシンプルな生き方をするなら、余計なしがらみに縛られることもない。自由に生きることを求めた時代性というのもやはり考えなければならない。 計算されて出来た訳ではないけど、時として映画というのは、こう言うのが見事に噛み合って傑作を生むことがあるという好例だろう。
ちなみに私はこういうラブロマンスものが今ひとつ乗れないのだが、ここまでシンプルにやられてしまうと、文句も言えない。
実は主演には数多くの男優にオファーがあったのだが、こんなシンプルな作品は受けないと、ことごとく蹴られてしまった。結局オーディションとなったが、その中でもオニールはひときわ目立っていたという。ちなみに出演料は僅かに2万5千ドルだったとか。オニールは私生活でのプレイボーイぶりが揶揄されたが、逆にそれが近親感をわかせたとも言われる。
日本では角川書店が本と映画のキャンペーンを張り、メディアミックスの先駆けともなった作品で、歴史的な意味合いも大きい。
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