[コメント] 野良犬(1973/日)
緑魔子の弟は鎌倉のジャズフェスティバルにいると聞き出す。ジャズで踊っている若者たち。なんかとても奇異な演出。弟は堀内正美が演じている(彼は真犯人ではなく、手がかりは得られる)。
渡の先輩で(というか、今の言葉で云うとメンターだが)、事件を一緒に追う刑事は芦田伸介だ。芦田の家のまわりには、オレンジの花が沢山咲いており、画面にいろどりを与えている。カンナという花らしい。実は、花の名前は見終わってから、Googleで調べようと思っていたが、芦田の妻の赤木春恵の科白で分かる。芦田の娘は松坂慶子。渡といい雰囲気に発展するヒロインかと予想するが、渡はそれどころではない役だ。
本作の真のヒロインは、拳銃強盗の真犯人の仲間で、沖縄出身の朱美。演じるのは中島真智子という人。この女優が可愛い。アジト、横浜鶴見の倉庫のシーンでは、きちんと胸も見せるのでポイントが高い。また、彼女が沖縄民謡「汗水節」を唄い、芦田と会話する場面では、「そんな目でいつも見つめられている人間の気持ちは、見つめている人には分からない」という科白があり、差別に対する怒りを訴える。
さて、渡から盗んだ拳銃は、沖縄出身の若者達が、それぞれ一発づつ、恨みのある相手を殺害していくことに使われるという事件に発展する。リーダ格で、中島の恋人を志垣太郎が演じているが、満を持して登場する割には、それほど目立たないのは腰砕けか。
アクションシーンでは、川崎駅前で芦田伸介が犯人たちに肉迫するシーンと、新宿歌舞伎町(当時のオデオン座やコマ劇場の辺り)での、渡の追跡シーンが、よく見せる。新宿の場面では、スローモーションも印象に残るが、渡が、拳銃を持った一人を追い、道路工事現場の地下に降りた後、唐突にディゾルブで火葬場の煙突に繋ぐ、というカッティングには吃驚した。
本作の渡哲也、ドロドロになったりビショビショにされたり、あるいは失意のシーンも多いし、弱々しい姿が印象に残るのだが、それでもカッコいい、というのが彼の良さだろう。ラストシーンは、ちょっと『ダーティ・ハリー』を思い出させる。
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