[コメント] パラダイム(1987/米)
終盤で描かれる「向こう側」の禍々しい闇は、逆説的にも、「こちら側」の眩い光との対比によって際立たせられる。この、ミニマムな視覚的演出による、形而上的なるものの現出。
この現出によって、狭苦しい建物内空間に、世界崩壊の壮大なビジョンが到来する。
こんなものを見せられると、つい作品を全肯定したい衝動に駆られるが、このシーンに至るまでは、あまりにも漠然とした状況下、あまりにもせせこましく事態が推移する。終盤の世界観の片鱗だけでも予め示されてあれば、感じ方もまた違っただろうが。
調査チームの面々を、ジッと突っ立ったまま見つめてくる浮浪者たち。彼らが、この世ではない「向こう側」の闇からその目を向けている、憑かれた者たち、というインパクトを持ち得なかったのが、致命的な欠陥。あんな程度では、ただ怪しい人たちという、「こちら側」の存在としか感じられない。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。