[コメント] 女体(1969/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
叔父のラーメン屋のバイトで月5万はボロい。69年は大学経営者をやっつけるのがトレンド。浅丘が学長秘書を突き上げる会議室の外からは全学連のアジが聞こえており、学園の不正がやり玉にあがり、浅丘はデモする学生にカンパしている。
強姦を暴かれて「誰でもやっているよ」と開き直る青山良彦がすごい(この世代は強姦などよくあることだったと先輩から聞くこともあるが嘘かも知れない)。浅丘は金貰って仲介した秘書の岡田英次にヨロメき、「ねえ抱いて、一度だけでいいの」で翌日彼のマンションに押しかけて妻の岸田今日子に全部ばらす。同棲が始まると今度は岡田の妹梓英子のフィアンセ伊藤孝雄を狙う。
このように浅丘はどんどん馬脚を現すのだが、映画は馬脚を現す度に浅丘を、おもろうてやがて寂しき存在として描く。ゲットした場末のバーで情けないような男性客の相手して踊って、伊藤孝雄に相手されずに海に飛び込んで「助けてくれたのね」と抱きついて妹に見せびらかすのだが人格者の妹はびくともせず恥をかく。運転させてとフィアンセのクルマを電信柱に衝突させる件は、ガラス玉のようなフロントガラスの飛び散りに即物的な味がある。
「家にじっとしているのができないのよ」と浅丘は嘆く。「ひとりの男で満足できたらいいでしょうね」。戦前の女とは別の生きにくさがあるのだと自己分析もしている。彼女を映画は応援しているだろうか、批難しているのだろうか。いかようにでも取れるタッチ、絶妙の匙加減なのだが、ただ、最後に偶然抜けたガス栓のガス吸って死にゆく入浴中の浅丘に、もうこの人は死んだ方がいいのだと、映画は云っているのだろう。
真っ白い歯みせて笑い続ける川津祐介が怪演で、最高に素晴らしいのは浅丘が買った「コーポ」(高級マンションがこう呼ばれる)に岡田が行くと、裸の川津が乱入する件で爆笑がある。浅丘が岡田を呼び出した喫茶店でフランシーヌの場合がかかっている。タイトルは「じょたい」と読む。恩地日出夫に同題(64)の田村泰次郎原作、団令子主演作があるが関連があるのだろうか。
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