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[コメント] 美しい夏キリシマ(2003/日)

現在17歳の俺。シュワちゃんとスタ公とジャッキーで育ち、そして「はだしのゲン」で学んだ世代です。多分。 2004年3月29日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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失礼ながら、退屈で仕方なかった。ガキだから、と言われても結構。この評価は、3年、否、10年、20年したら変わるものかもしれないけど・・・。ただ、今現在の俺にとっては、退屈で退屈で仕方なかった。

俺は「はだしのゲン」で育ち、あの漫画10巻全部を何度も何度も小学生の頃から読み返してきた。ガキの時期に「はだしのゲン」はマジに衝撃的だったし、戦時下の混乱、そして終戦後の混乱を「事実に基づくフィクションで描かれた現実」を通して学んだ。否、実際、それをナマで見たのと漫画で見たのでは天と地くらいの差があると思うのだけど、それはそれで別として・・・。

戦争を体験した人にとっては、この作品で描かれる「日常風景」は、一種の懐かしみを覚える風景だと思う。良くも悪くも。でも、俺は戦後の動乱も勿論戦時下の混乱も、高度経済成長期だって知る訳もないので、何も感じず、タダ淡々と流れていく「日常」を長めていた感じ。そこに「戦争」と結びつくインパクトを感じられなかった・・・。って、俺がハリウッド製のド派手な戦争映画に慣れすぎてるせいもあるのか・・・。嗚呼、愚か也。

確かに、この作品に於いては、その「平和すぎる」という事が重要なのは分かる。一見すれば平和で何の変哲も無い平和で自然が綺麗な田舎町でも、日本兵が駐屯し訓練をしていて、もんぺを履いた女性は竹槍訓練を行い、ガキどもは予科練へ叩き込まれて労働を強いられる。勿論、その背景にも、米軍の沖縄占領とそれに伴う米軍の上陸及び本土決戦、広島への新型爆弾の投下、ソ連の参戦、長崎への投下がある。この平和で穏やかなな田舎町にも、戦争の影は忍び寄っていた。

「玉砕覚悟で本土決戦勝利をもぎ取る」と言う日本兵の気狂いじみた考え方と、まだ中学生(今だと高校生か・・・)の(俺の一つ下と言う年齢)ガキが、空襲で友人を失った(助けられなかった)ショックから立ち直れず、その無念を晴らすには米兵を殺して敵を討つしかない、と考え、無謀にも竹槍の練習を始め、(敗戦した日本を)進軍する米兵に向かって竹槍一本で立ち向かっていく。その姿はまさに狂気であり、こんな片田舎にもじわじわと侵食していた戦争と、その狂気に侵された人々の狂気を垣間見る事が出来る。(個人的に一番印象的だったのは、駐屯中の日本兵に体を売って食いつないでいる女性のエピソードなのだけど)

でも、不謹慎すぎる事なのだけど、竹槍一本で米兵に突っ込んで行って、投げ飛ばされて笑われている少年の姿は、どーもギャグにしか見えず、俺は思わず、少しばかり噴出してしまったのだけど・・・・

脚本も良く出来ていると思う。「戦時下の日常=現在の非日常」を上手く描き出し、多くの登場人物を上手くまとめて、戦争の理不尽さを描き出している。だけど、特攻隊として死にに戦場に行く男や、帰国したのはいいけど片足が無い、だのいう描写は、どうも俺には何のインパクトも感じず、何を今更・・・と感じてしまった。

あまりに平和すぎて、そこに「戦争」というインパクトを感じれなかった自分が居るのかもしれない。否、そうやって「インパクト」だの安っぽい言葉で表現するのも何だけど、どうしてもそこに何も感じる事が出来なかった。ガキの頃にあんなに衝撃的なものを読み漁ったせいかもしれない。

見る価値はある。残すべき作品ではあるし、本当に良い作品だと俺は思う。戦争を経験している世代は、変な意味ではなくどうでもいいとしても、戦争を”知っている”人は見る価値のある作品だと思う。

あとは完全に見ている俺の問題。合わなかった、と言うか派手に演出された戦争映画を見すぎたか、それとも幼児期に得た衝撃が大きすぎたのか・・・どちらにしろ、この静かで理不尽で狂気の溢れた戦争映画を、俺はストレートに受け止められなかっただけ・・・かな?

★3.5

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)sawa:38[*]

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