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[コメント] なつかしの顔(1941/日)

あゝこれも道と人の映画だ。成瀬が撮りたかったのは、戦意高揚などではさらさらなく、家族の情愛でもなく、道を行く(歩く、走る)人(子供、大人、老人)だったのではないかと私には思えて来る。
ゑぎ

 また、竹ひご飛行機(ゴム動力のプロペラ飛行機)から始まり、この道具立てがプロットをドライブする梃子(てこ)にもなり、本物の飛行機の飛行ショットを挿入するモチベーションにもなるといった部分は『腰辨頑張れ』(現存する最初期の成瀬作品)を踏襲しているし、戦後まで通じて多くの成瀬映画に出現する映画館とそこで上映される映画中映画という部分でも成瀬らしさが溢れている。さらに、本作では映画の細部の重要性を極めて寓意的に表現している。ともすれば、涙で曇って見落としてしまうぐらいの細部こそが最も重要な部分かも知れないのだ。

 あと、田園風景の中に突然出現する兵士たちのショットの感覚も特筆しておくべきだろう。序盤の進軍ラッパと6人の兵隊もさることながら、何と云っても、花井蘭子が乗った亀岡行きのバスと交錯する演習中と思しき兵士たちのシュールな造型には驚かされる。前作(前年)の『旅役者』のヤケクソみたいなエンディングのシュールさとも違う、メッチャかっこいい画面だ。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・花井の義母(出征中の夫の母)は馬場都留子。義母の弟は藤輪欣司。花井の義弟(夫の弟で、まだ小学生)のコウジは小高たかし

・シンちゃんは小高たかしの実兄−小高まさる。マサちゃんは沢井一郎。マサちゃんのお父さんで大倉文雄。学校の担任の先生は深見泰三

(評価:★4)

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