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[コメント] サヨナラ(1957/米)

いわゆるらしゃめん映画。長くて退屈だが、米軍側から見た『キクとイサム』と思えば興味が湧いた。日本描写は特に落ち度がなくトンデモ映画の資質欠いているのが痛い。女優はアングラポルノ好み。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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米軍では日本人との結婚は違法、というのが物語の中心にあり、本作で面白いのはこの知見。恋の試練の物語発動に使われている。ハワイへの戦争花嫁ものは山口淑子の『東は東』や新藤の諸作があるが、あちらは相手が軍人でないから構わないのだろう。日本人女性を妊娠させて帰国し帰ってこなかった米兵、残された母子という主題は『キクとイサム』など幾つもあり、これを米側から描いている。マーロン・ブランドの父の大将は、日本人と結婚した者への日本からの転属命令にあたり、喜ぶ兵もいる、大抵は相手は娼婦だと語っている。

ブランドの連れのレッド・バトンズはカツミナンシー梅木と、たとえ市民権を失っても結婚する、議員が訴えてくれていると頑張っており、ふたりが死んだあとでこの法改正の朗報が入る。ふたりは神戸の事務室みたいな部屋で結婚。牧師代わりの上司に不利益は承知だろうなと云われ、見張りがつけられ、ついには本国へ転属。立会人のブランドも睨まれる。違法なら結婚させなければいいのにと思うが、この辺り説明不足で曖昧。法より結婚の権利は上回るのだろうか。上司によって裁量が違うということだろうか。

1951年、マーロン・ブランドの少佐は大将の息子。病気で朝鮮戦争から日本へ転勤となり神戸に赴任。オヅで有名な鏡獅子など歌舞伎を観劇して男尊女卑を学ぶ。親が薦めているパトリシア・オーウェンズとのすれ違いが延々描かれ、後に日本人とのロマンスが控えているのだからどうせ別れるんだろうと判り切っているため、実に退屈。ふたりは浮気合戦に至り、彼女も歌舞伎俳優のナカムラリカルド・モンタルバンと遊んだりしている。

空軍に飽きたらないブランドは松林歌劇団(!)のハナオギ高美以子に一目惚れしてお近づき。このレヴューは力入れて撮られているが、舞台の採光は歌舞伎も歌劇団も悪くて安っぽい。和室だの酒だのの紹介はアメリカ人には興味深いのかも知れないとは思う。戦争で父を亡くしたハナオギは米国人を残酷な野蛮人と憎んでいるのに、過去は水に流そうというブランドの日本人みたいな提案をすぐさま了解して二度目の逢瀬でさっさとキスしているらしゃめん映画の常道。恋に落ちるのはいかにも早すぎるが、西欧人に簡単になびく日本女性は彼女に限ったことではないと映画は強弁するのだろう。

その他、茶道とか能とか伊勢神宮とか七夕祭りの花火とか浄瑠璃(物語に合わせて道行もの)とかが絵葉書のように描写される。2時間20分はいかにも長く細部は薄味で当たり前の説明を延々聞かされ苦痛。米軍軍人の日本の印象ってのはこういうものなんだろう。自国映画しか観る機会のないアメリカ人向け風俗映画としては珍しいものだったのだろう。

ふたりが自殺すると旅館にヤンキー・ゴー・ホームのデモが押し寄せ、河原でねじり鉢巻きした荒くれ衆が登場して米兵に襲いかかりブラントは避難。20センチほどに切った竹筒が渡されているのが細かい描写。反米の連中に金で雇われていると大将は説明している。親に売られた借金が残っていると高美以子も東京に逃げ去るが、全てが終わったあと、この米兵の日本人妻に入国を認める法案が通過予定と知らされる。帰国に当たってブランドは高美以子をもう一度口説いて本国へ連れて行くのだった。

ナンシー梅木の演技はとてもアカデミーとは思われない。女優はアングラポルノ好みで、アメリカ人の女性の趣味は我々と違うのではないかと思わされる。再々出てくる米軍クラブは接収した設定なのだろう、土台が石造りなので和風というより中国風に見える。タイトルはローマ字表記で、横に平仮名が付される。ベストショットは梅木らの新居訪ねて電球の傘で頭打つブランドというアメリカンジョーク。

(評価:★2)

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