コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 潜水艦轟沈す(1941/英)

原題の『49th Parallel』とは、緯度49度線、米国とカナダとの国境のことを指している。冒頭、ハドソン湾で、独軍潜水艦が沈められる。沈没前に食料調達のためカナダ領内に上陸していたドイツ兵達の話。
ゑぎ

 邦題から、ずっと潜水艦を舞台とし、終盤に轟沈する映画かと思っていたので、この冒頭の展開には驚いた。ドイツ兵達がカナダ逃亡中に出会う事件のオムニバスだ。逃亡ドイツ兵の指揮官はエリック・ポートマンが演じており、ある意味、彼が主役だ。

 まず最初の挿話は、イヌイット達と、フィンレイ・カリーローレンス・オリヴィエのいる交易地。オリヴィエは仏語訛りの英語を喋る(というか仏語とのチャンポン)。この場所は通信基地でもあり、カリーとオリヴィエが逃亡ドイツ兵らに拉致される。オリヴィエは殆んど見せ場無し。

 続いて、ドイツ移民の農業集団へ紛れ込む話。グリニス・ジョーンズ演じる娘アンナは16歳の2日前と云う。10代のジョーンズ、なかなか可愛い。集団のリーダーはアントン・ウォルブルック。ポートマンは、皆ドイツ移民だから賛同を得られると信じて、ナチス賛美の大演説を行う。こゝが全編でもかなり浮いたシーンだが、迫力はある。ただし、ウォルブルックも迫力では負けていない。

 ウィニペグのシーン等を挟んで、三話目は、湖の側のキャンプで、レスリー・ハワードと出会う話。ハワードは、ピカソとマティスとトーマス・マンを愛する芸術家(学者)。ポートマンとの対比は、勇気の在り様で描かれる。ハワードが一番カッコいい役か。

 最後は、米国国境近くの列車の中。一人乗り込んできたカナダ兵士、レイモンド・マッセイとの対決。ポートマンは、当時まだ参戦していない米国に逃げ込めば、ドイツに帰ることができるのだ。ナイアガラの滝にある米国税関を通過することができるのか、という話だが、ネタバレも何も、当時の英国映画なので、概ね結末は予想できますが、なかなか愉快な演出だ。

 全体を通して良く出来た娯楽作ではあるが、オムニバスの弊で、各挿話とも、駈け足で描かれた感が強く、少々物足りない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。