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[コメント] ぼくの小さな恋人たち(1974/仏)

お祖母さんの家。主人公のダニエルが、朝、自転車で学校へ行く様子を屋内に置いたカメラで撮ったシーン。玄関から窓外へパンして見せる。本作はダニエルが出ずっぱりの映画。彼のいない場所は、ほゞ映されない。
ゑぎ

 歩くダニエルの横移動や、自転車で走るのをやはり横移動で撮ったショットが多数ある。友人たちとの自転車3人乗りの疾走感。その際、フレームインやフレームアウトも効果的に使われ、リズムが出る。

 序盤は田舎の町。知り合いの女の子に無視された後、豆鉄砲をこの娘の顔面に向けて撃つシーンが強烈に印象に残るが、このような緊張感をずっとたたえている映画だ。ダニエルは高校の試験に合格して新聞に名前が乗る。喜んでいると、屋台のオバさんから、ウチの娘に豆鉄砲を二度と撃たないで、と云われる。この見せ方もいい。

 お母さんと男が訪ねて来る。今度の男はジョゼ。スペイン人の農業従事者で寡黙な大人。お母さんはイングリット・カーフェンがやっている。そのうち、お母さんの家へ引き取られる。少し都会。映画館が四軒あると云う。しかし、高校は無理。授業料はただでも他でお金がかかる。というワケで、ダニエルは、ジョゼの弟アンリのバイク屋で働く。ダニエルは最初の客からバイクを器用に修理するが、バイク屋も儲けが出ていないのだろう、アンリの友人は、こんな子供、クビにすりゃいいと云う。この友人はモーリス・ピアラらしい。兄貴の甥なんだ、と微妙な嘘を云うアンリ。

 映画館でエヴァ・ガードナージェームズ・メイソンの『パンドラ』を見るシーン。前の席の女の子に耳元で囁いて、キスをする。フランスでは、こんなに簡単にキスが成立するのかと驚いてしまう。町の中の遊歩道を散歩する人々。こゝでナンパするのがこの町の文化らしい。ジャン・ユスターシュの映画には、必ずナンパする場面が出て来る。

 夏休み。男の子たちはナンパ目的で隣り村へ行く。ダニエルと友人は、女の子2人をつける。道で話しかけると姉妹と云う。ダニエルは妹の方。私にはまだ小学生ぐらいに見える。草原で横臥してキス。友達と姉の方を、チラッと見ると、キスだけでは済まないよう。ダニエルも胸や足を触ろうとするが、ダメ。ちゃんと付き合って、結婚するって決めてから。次の日曜日に来て。ダニエルはOKするが、モノローグで、次の日曜日はお祖母さんの家だ。

 ラストシーケンスはお祖母さんの家に帰省した場面。近所の友達と再会する。みんなで一緒に森の方へ。こゝでもダニエルは、緩く突き放されるし、彼の何かが解決する、ということもないのだが、不安や不穏さの中にも、確実に彼の成長が感じられるエンディングのように私は思った。全編に亘って、ネストール・アルメンドロスの画面の美しさに惚れ惚れしながら見る。

(評価:★4)

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