[コメント] 戦艦大和(1953/日)
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少尉たちはハンモックで休み、舟橋元の少尉はスピノザ読んでいる学徒兵もの。この太っちょが主役で、なんかノロノロっとしているのが味。アメリカ二世の少尉和田孝は周囲に疑念を持たれ、「一緒に平和の日の来るのを祈りましょう」という在アメリカの母親からの手紙(スイスを介してでこれだけが届いたと云われる)を読んで泣いている。
世界の無用の三馬鹿は万里の長城、ピラミッドと戦艦大和と語って顰蹙を買う高島忠夫の狂言回しがある。もう作戦で無用になって囮に使うんだろうと本当のことを喋くるのだった。こういタイプはいるものだ。戦闘後も「誰が浮沈戦艦だなどと嘘云いやがったんだ」と怒る兵がいた。そんなものだなあとの感慨がある。作戦に際し、乗船三日の幹部候補生35名は下船。立派な士官になってくれと藤田が訓示している。こういう人たちが自衛隊に入ったりしたのだろう。老年兵も具申により下船している。
佐竹明夫(当時は片桐餘四郎)は久我美子に出征前に、別の男と結婚して幸せになってくれ、「君が幸せになったとき、俺は君のなかで生きるんじゃないか」と頼んでいる。これは何か奇妙なレトリックで、ここではささやかなものなのだが『永遠の0』みたいでもある。
河合健二の中尉の鉄拳制裁を伊沢一郎の大尉が止めさせる、という実に珍しい件がある。「もう何時間生きているんだ。いま絞めたって仕方ないじゃないか」。舟橋元と中山昭二は、お互い女知らずに死ぬんだなあと笑い合い、女房子供のある部下を気遣うのだった。
甲板は絵画との合成、背景の海も合成でリアルとは違う迫力がある。大人数で君が代唄う件は怨念篭って濃い。しかし続く出撃はパチンコ屋マーチで間抜け、新東宝も模型がいいのか悪いのかよく判らない。伝達方法他考証は正確なのだろう。休憩にあたって「煙草盆出せ」というフレーズがあった。アニメ混じりの戦闘は「マグマ大使」みたい。予算不足か、甲板上はスケール感がなくて戦争ドタバタ映画みたいだ(『細雪』もこんなスケール感だった)。「すごい物量や」「こらあかんわ」みたいななぜか関西弁の会話がリアルである。
少年兵を中学生みたいな子供たちに演じさせている。本作のいいのはここだった。伝令が戻ってきて弾が怖くていけませんと云う。舟橋は自分を殴らせて、その勢いで行ってこいと走らせている。
嵯峨美智子がお兄様御無事でと云ったときに片山明彦は遺体の山に転がされる。傾斜復元見込みなし、佐々木孝丸の艦長は体躯を縛らせて総員避難。海上で木に捕まっている兵にも機銃掃射があったのも本当なのだろう。これはアメリカのひどい描写だった。生き抜くんだと丸太に掴まって主人公。三千余名の骸が眠ると字幕。「戦争で生き延びた者こそ真実次の戦争を欲しない。太平洋よその名の如く長しえに静かなれ」と主人公のナレーション。
応援監督に松林、応援撮影に三村明の名前がある。見明凡太郎の軍医の妻が18歳というのが聞き捨てならない細部。
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