コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 叛乱(1954/日)

北一輝の、複雑かつ魔的な思想性やカリスマ性は皆無。演じる鶴丸睦彦は矮小な爺様にしか見えない。だが、青年将校らを中心とした、何が大義に最も沿うか、についての逡巡、留保、決断etc.の心理劇としての緊張感は高い。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







僕が知る限りでは北は、処刑前に「天皇陛下万歳」をしようと誘われて「私は死ぬ前には冗談をやらない事にしている」と答えたという話なのだけど、劇中の北はむしろ青年将校たちに、信念をもって「天皇陛下万歳」を言わせて死なせたい、などと言う。最期の時に万歳を断るのは西田税。それに先立って、全ての青年将校たちが万歳を叫んで死んでいった末の、この西田の態度は、結局決起が天皇への反逆、「叛乱」として終わった事を示しているのだろう。

全ての決断の究極的な主体として捉えられている「天皇の大御心」の曖昧さが、青年将校たちの考える「大御心」に沿う行動への情熱をかき立て、いざ「大御心」が示された時には、彼らは叛乱を起こした者たちとして裁かれる事になる。肝心の天皇は終始、顔を見せる事は無い。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。