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[コメント] 誘惑のアフロディーテ(1995/米)

実生活でのスキャンダルをも映画にしてしまうアレンは本物の映画人です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 現在のニューヨーク派を代表となるアレンのロマンティック・コメディ作品。しかし単なるロマコメでもアレンが手がけると一風変わった作品になってしまう。人生とは皮肉で残酷。しかし、それがコメディになってしまうと言うことをよく分かった作品であろう。

 題からも分かる通り、本作はギリシア神話に例を取り、画面の端々に預言者やら神々、果ては神話の朗読者まで配し(これ自体がかなり皮肉な存在だな)、教訓じみたことを延々と語るのだが、その教訓が何らか活かされているということはなく、むしろ人間の愚かな行いを神々が横目で観ながら笑ってる。と言った風情。かねがねアレンの笑いの質は、恋愛事に夢中になってしまう自分自身を突き放し、「愚かなことをやってる」と自分自身で笑いながら、それでも夢中になることを止められない。と言うところにあると思っている。その意味ではアレンの映画作りは常に神の視点を持ってなされているのだが、ここで本物を出してしまったと言うことになるだろうか。結果的に笑っているのも、笑われているのも本人。その自覚がシニカルさを作り出す。影のある笑いを撮らせたら一級品だね。特にあの皮肉の利いたラストシーンには苦笑いするしかない。

 羨ましくはない。だけどまんざらでもない人生を送ってるじゃないか。最後にそんな風に思わせてくれるのがアレン作品の特徴か。

 毎度の事ながらキャスティングも見事。特に娼婦役のソルヴィーノの存在感が際だってる。我を押し通す押しの強い女性ではあるが、一方ではまるで少女のようなはにかんだ笑みも見せる。そのギャップをひっくるめて演出出来たのはアレンの手慣れた描写能力あってこそ。

(評価:★4)

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