[コメント] 悪名一番(1963/日)
第1作は満州事変の頃の設定だった本シリーズも舞台が戦後に移ってきた。戦後の闇市が混乱と復興を象徴し、シリーズを通して鑑賞してくると次第に背景が豊かに落ち着きを持ってくるのが良く把握できるような作りであった。まさに昭和の世俗を描いてきたシリーズであった。
そして本作の描く背景には正直驚いた。これまで関西の混沌とした闇市や瀬戸内の小島が舞台設定にされていることで、現代の日本とは違う「古き日本」を舞台にした「時代映画」的な趣きで鑑賞していたのだったが、本作はまさに「空が見えないほどのビルの群れ」の中で着流しの朝吉が活躍するというギャップ。
本作もそのギャップをストーリー構成の大きな要因にしているのだが、鑑賞している私も、これまでの設定だった地方とこの時期の東京とのあまりもの格差に当初は戸惑ってしまった。映画の本筋とはまったく関係のない所ではあるが、戦後数年で首都東京はこうまで進化するのかと。
そして作品の内容では、主人公二人の「靖国神社」に対する主観の違いというか知識の差を旧世代と新世代とのギャップの象徴として描き、その差を埋めることで絆の再生を保つという構成になっている。
そう、本作は地方とトーキョーとのギャップ。そして旧世代と新世代とのギャップ。さらに侠客と新興ヤクザ(定番のギャップ)、これがキーワードになっていた。
そんなキーワードを保ちつつ本筋であるストーリーを練っている脚本は上手でした。大量生産のプログラムピクチャーでありながら、押さえるツボはしっかりと押さえる、私はこういう細かく計算された脚本が好きです。マンネリ化が始まったシリーズにおいて、こういった新機軸を見せてくれるとは嬉しいかぎりです。
PS.本作の田宮二郎は格好良いです。シリーズベストの活躍じゃなかったでしょうか。
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