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[コメント] 昨日と明日の間(1954/日)

これ、鈴木清順みたい。川島雄三の日活移籍前、松竹での最後の作品。助監督時代の清順も同時期に松竹から日活に移籍したのだが、本作に相当影響を受けているのではないか。
ゑぎ

 非常に凝ったオープニング。淡島千景鶴田浩二が電話で別れ話をしているのだが、お互いの背後にスクリーンのようなものがあり、映像が投影されているのだ。鶴田は放送局にいるようで、バックに大きなモニターがあるのだろうとすぐに分る。しかし、淡島の後ろのスクリーンは、この時点では何か分からない。

 続いて、鶴田の別府への船旅のシーンになる。甲板に一人佇む月丘夢路。鶴田から話しかける。こゝで、月丘が何やら薬の小瓶を落としたりする。また、鶴田は、知り合いの船員から、要監視者が乗っていることを聞いたりもするので、月丘は自殺の恐れがあるのだろうと推測する。そして、船室で鶴田が灯りを消して寝たショットの次に、断崖上で彼が月丘の頬を打つシーンを繋ぐという驚きの編集を見せるのだ。てっきり夢かと思ったが、一気に時空を飛ばした川島らしい才気走った演出だ。月丘は、自殺の原因は失恋だと云う。しかし、夫もいることを告白する。ちなみに、本作の月丘は、私が見た中でも一二を争うと云っていいぐらい美しく撮られていると思う。

 といった導入部で、鶴田をめぐる淡島と月丘のトライアングルの関係を描くのだが、鶴田と月丘の再会は、鶴田が新会社設立(航空事業)のための投資を頼みに行った先、大阪の会社社長−進藤英太郎が月丘の夫だった、という世間は狭いパターンだ。また、鶴田に未練のある淡島は、鶴田がパイロットを捜していると聞き、私が紹介すると云って彼を三宮のバーへ連れて行く。このバーのバックルームが、映画館のスクリーンの裏側になっているという不思議な装置で、冒頭の画面のからくりが種明かしされるのだ。こゝで淡島の子分のような野添ひとみと、飛行機好きな若者たち−大木実片山明彦大坂志郎らが紹介される。

 プロットの主軸は、鶴田は淡島と月丘のどちらと結ばれるのか、という恋愛の行方と、設立した飛行機会社が成功するか、という点にフォーカスして描かれるが、いずれにおいても、けっこう複雑な展開だと思う。川島はこれを見事にさばいて見せる。私が面白いと感じた例をあげると、月丘は夫の進藤から焼きもちをやかれ、男とは誰とも口をきくな、と云われるが、鶴田とだけは口をきいてもいい、というトンチンカンなことも云われる。しかし、進藤の封建的な考え方を月丘は意にも介していない、というところが良い点だ。一方、鶴田から見ると、進藤は仕事の上では、とても尊敬できる人物である、という一面もちゃんと描かれるのだ。

 あるいは、淡島と月丘の対決シーンが2回あるが、いずれも良い場面だ。淡島は普段は標準語で喋っているが、凄むと途端に関西弁になる。特に、野添が月丘の家に来て、香櫨園浜に呼び出した後の浜辺のシーンがいい。淡島が3発ぐらいビンタする(かなりの不良なのだ!)。しかし、月丘は、はっきり鶴田のことが好きだと云い返す。すると、淡島は海へ走って行き、堤防に座って泣くという場面。上でも書いたように、本作の月丘はたいへん綺麗だし、彼女の心持ちのあり様にフォーカスされる部分が多い作劇なので、淡島以上に月丘がヒロインというべきだと思うが、しかし、見どころになる場面が与えられているという意味では淡島の方が勝っているだろう。何と云っても、終盤の飛行機会社設立前夜祭における、淡島の唐突な仁義の口上のシーンは、違和感はあるが、映画全体のクライ マックスだろうし、ラストシーンも淡島が締めるのだ。それは、淡島と野添が、例のスクリーン裏が見える店にいる場面で、このスクリーンによって虚実を越境させてしまう演出だ。これは面白い!中盤の、鶴田と淡島が銀座を歩く場面で出て来る、ガラス板の下から仰角で撮ったショットなんかも含めて、清順は、この映画にかなり影響されているのではないかと思うところだ。

#備忘でその他の配役等を記述します

 月丘が8年間思っていた四宮(役名)は菅佐原英一。四宮の婚約者は御園裕子。彼女も「口をきかないで」と云う。これも面白い。また、月丘の家の女中は高友子で、飛行機好きの若者の中には青木富夫もいる。高友子も青木富夫も本作の後、日活に移籍する。そして、この二人は『帆綱は唄う 海の純情』(鈴木清太郎 1956)に揃って出演することになる。

(評価:★4)

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