[コメント] 国士無双(1932/日)
まずは、片岡千恵蔵が、二人の浪人者から、伊勢伊勢守を名乗るように云われる短いシーン。2つめの場面は、片岡と二人の浪人の3人で、芸者遊びをしているシーケンス。片岡は羽織袴でツケひげ。汚い煙草道具を出したり、ひげが外れたりして二人の浪人を慌てさせる。芸者たちが、全然知らんぷりしているのがギャグになる。3つ目の場面は充実している。街道で当時15歳ぐらいの山田五十鈴を片岡が助けるシーンに始まり、ホンモノの伊勢守である高勢実乗が登場し、山田はその娘と分かる。ホンモノの高勢がお礼をしたい、というのに対して、ニセモノの片岡が、それには及ばん、を繰り返す。さらに、片岡が伊勢伊勢守と名乗るものだから、決闘に発展する、というシーケンスだ。このシーケンスは長い尺が残っているのだが、ほとんど高勢実乗が独壇場でコメディ演技を披露する。続く4つ目の場面は、片岡に負けた高勢が、仙人に弟子入りするシーケンス。仙人は若き伴淳三郎がやっているのだが、寄りのカットが無いのと、老けメイクとで、伴淳かどうかが判別できない。こんなカットしか残っていないのが残念だ。そして、最後の場面は、3年後の、道場でのリベンジ試合。仙人の元で修行を積んできた高勢は、果たしてニセモノ片岡に勝てるのか、というクライマックスだ。
というワケで、こんな欠落版を見ただけで、ちゃんとした評価をすることはできないかも知れないが、これを見る限り、ギャグは今見ても面白いし、役者をのびのびと動かしているのは分かるが、画面作りにはほとんど工夫がみられない演出だと感じる。矢張り、伊丹万作はスジとドウサの人だという偏見が強化される。
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