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[コメント] フルタイム・キラー(2001/香港)

確かに失敗作かもしれないが、とても魅力的な失敗作だ。また、反町隆史に非はない。「アンディ・ラウと配役を交換すればよかった」というような簡単なものでもないだろうが、「追われる王者の悲哀」を演じるにはこの反町は若すぎる(私はこれを『拳銃王』のグレゴリー・ペックを想いながら云っています)。
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**ネタバレ注意**
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ジョニー・トーにしては映画の勘所を掴みきれていないという印象は否定できない。反町とラウの関係性が淡白であるのは贔屓目に見ても物足りないところだ。「金」「地位」「女性(ケリー・リン)」といった対立軸候補がことごとく等閑に近い扱いしか受けないため、両者の対立もまた抽象的になってしまう。むろんここではとりわけリンの扱いをもっと煮詰めるべきだったろう。また、ラウとリンが日本語で会話する(!)など、序盤で予感させたスリリングな多言語映画の相貌も劇の進行につれて放棄されてしまう。サイモン・ヤムに対するリンの偽証と「真実」を交錯させる幕引きは伝説の生成過程を描いたものとして『リバティ・バランスを射った男』を連想させるところもあるが、その仕方は少しく取ってつけたような感がある。

ただし、倉庫で繰り広げられるラストのアクション・シークェンスは文句なしにすばらしい。「花火」と「段ボール箱」などという安価の素材を用いてここまで密度の濃い画面を創造しようとするところにアクション演出家としての野心がある。全篇を通じてスローモーションが濫用されているという指摘もあるだろうが、この映画においてスローモーションはアクションそのものではなく、もっぱらアクションの結果(吹き飛ぶ人体・拡がる煙・飛散するモノ)を拡大して見せるために使用されている。適切である。

ここでのリンとチェリー・インも例に漏れず、トーはいつも女優の趣味がいい。

(評価:★4)

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