ロードムービーっていうのは、何かしら目標があってそれに向かって進んでいく過程（行路）を映し出すものである。重要なのは過程そのものであり、目標自体は別に大したものでなくともよい。優れたロードムービーでは、過程の輝かしさの前にときに目標は忘れさられる。本作においても目標はお金という即物的でありきたりのものであるが、主人公が肉体的にも精神的にも充実を得ていく過程の前に目標は霧散解消する。それこそがロードムービーの醍醐味の一つである。

相方の鈴木卓爾とは裏腹に、矢口史靖はときとしてテレビ的でつまらない演出に終始してしまうことはあるが、根っこの部分では映画を理解している人物であると思う。大資本と組んでヒットした『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』における成長過程の美しさなどは、本作の構造をきれいに踏襲している。