自分にはこの「知の牙城」をしっかり攻略する力はなかった。知的過ぎ、洗練され過ぎなのが、もはや欠点の領域にまで至っている。しかも、これ以上簡略化の仕様がない、意味のある晦渋さだ。加えて、扱う内容も稀有壮大かつ多種多様でついていけないぶっ飛びぶり。イデオロギー、生命倫理、文明哲学・・・。うっすらと、コメディであることを認識するのがやっとだった（とてもとても一口にコメディと括れないけれど）。負け惜しみでいっているのではない。

日本未公開で、シネマスケープにも（現在）登録リクエストさえされていない。考えすぎだとは思うが、このマイナーさはどっかの圧力が関係してるんじゃないか？　舞台がイギリスとはいえ、ロイヤルの扱い方が半端ない。ヤバイ。恐らくダイアナ妃の死後に公開されたとしたら大きな話題をさらったはずだ。日本ヴァージョンなどまず実現不可能だろう。

＊凶事俳優マルコム・マクダウェルが終盤ホラーも真っ青の扱いを受けるが、決してそこだけが突出しているわけではない。異なったタイプの力点が次から次へと繰り出されている。見ごたえの面でいったらトップクラスの映画だ。