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[コメント] チャップリンの冒険(1917/米)

ドタバタ喜劇を自ら葬り去るかのような総括的な施しという狙いがあったか前作『チャップリンの移民』に比してドラマ度は狭小なSO-SO作品
junojuna

 チャップリンミューチュアルコメディとしての最後の作品。そしてエリック・キャンベルの遺作として合掌な作品である。作品の出来としては、チャップリン新時代の幕開けを予感させる前作『チャップリンの移民』に比べて、キーストン時代からのトレードマークであった追いかけっこを主軸とする昔とった杵柄的な風合いの予定調和として別のベクトルに寄ったものである。さすがアイデアやアクションには一日の長があり、その施しに納得の技芸は揺るぎようのない安定感を示して上々であるが、映画の結びとしてはたいした創意が見て取れない分、チャップリンの頭はもはやファーストナショナル期の構想でいっぱいだったのではないだろうか。前作同様、映画のデザインスケープをものにしたスケール感だけに、この程度のドタバタでは手抜きな感も否めない仕上がりである。しかし、自身のフィルモグラフィを外郭的にセルフプロデュースできるくらいの度量はチャップリンならではの成果だろう。ちなみにこの期のチャップリンフィルムを脇で固めるエリック・キャンベルは、この映画を撮り終えて間もなく、酒気帯び運転で事故死してしまった。この後に、同じ類型キャラクターでかつての盟友マック・スウェインが返り咲くことを思えば、チャップリンにとってはひじょうに惜しい相棒の死であったことだろう。

(評価:★3)

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